考えている時に使う「内なる言葉」を意識する

 では、どうすれば深く考えることができるようになるのか? そこで、意識していただきたいのが「内なる言葉」です。

 言葉には2種類あります。

 ひとつは僕たちが普段から使っている「外に向かう言葉」、もう一つが考える時に無意識に頭の中で使っている「内なる言葉」です。この事実に気づいてから、僕は考えるという曖昧な作業が非常に楽になりました。

「外に向かう言葉」は、わかりやすいと思います。今、僕が話している言葉、それは相手、外に向かっています。声に出さなくても、例えばSNSで何かをつぶやいた。これも外に向かって出ています。

 人はどうしても、相手に向かう言葉を意識し、これを飾ろうとします。でも、そこには自分の思いという一番大事なものが抜けてしまいがちです。

 一方で、人は誰でも心(頭)の中で何かを思っています。かわいい猫がいれば、「あっ! かわいい」「こっちにおいで」とか、暑い日にかき氷をみたら、「食べたい!」とか。

 つまり心の中で、自分の気持ちを言葉にしているのですが、普段、それを意識することはありません。でも、本当の気持ちはそこにあるのです。

「内なる言葉」の解像度を高めていく

 僕は、この「内なる言葉」を意識するようにしてみました。

 最初はぼんやりしているこの言葉の解像度を上げ、把握して、そこから思考を広げていくことを考えたのです。

 それを「T字型思考法」と言います。まずは自分の中に生まれた言葉と、まっすぐに向き合います。その言葉を中心に置いて、右に「なぜ?」、左に「それで?」、下に「本当に?」というふうに紙の上にマス目をつくります。

 最初に、真ん中の言葉に対して、「なぜそう思うの?」と自分に問いかけます。思いつくことを、なんでも書き出します。もう思いつかないなとなったら、今度は左側、「それでどうなるの?」と問いかけます。

 ここも出尽くしたと思ったら、最後に本当にそうなのかなと考えます。このとき、ほかと同じ言葉が出てきても構いません。とにかく書き出していきます。

 そこに書かれたものはすべて心の中の言葉、自分の思いです。

「本当に?」まで考えつくしたら、一度、書いたもの全部を眺めてみる。そこにある言葉を組み合わせるだけで、自分の思いを言葉にできることに気づいたのです。自分の気持ちですから、はっきりとした相手に伝わる強い言葉になるのです。