とりわけ、ヘルパー事業所は危機的状況にある。

「賃金が安く、人が集まらないのです。このままでは在宅介護難民が続出します。しかし、政府は“介護は在宅重視”としながらも、在宅ヘルパー対策は打っていません」

“隠れ介護難民”が増加

 特別養護老人ホームの現状はどうか。待機者は減ったとも言われている。

「数だけ見れば減ったように見えますが、それは入所条件を原則として要介護3以上に引き上げたから。つまり、要介護1、2の人は締め出されたわけです。軽度認知症には要介護度の低い人も多く、本来、徘徊するお年寄りは特養の入所対象。行き場をなくした“隠れ介護難民”が増えています」

結城康博さん
すべての写真を見る

 在宅介護となった場合、これまで以上に家族の負担は重くなる。

「例えば、働き盛りの50代夫婦の場合、介護と子どもの大学進学の時期が重なることも珍しくない。政府は返還義務のない給付型奨学金を拡充させようとしていますが、大半が低所得者向けで、中間層には限定的です。

 親の介護と、子どもの大学費用の支払いというダブル負担で、袋小路になる。 こうした問題が解消されない限り、介護負担の連鎖が起こり、親子2代の介護難民が現れる可能性もあります。孫世代のことを考えてみても、介護サービスを充実させる必要があります

 今後、介護はどうなっていくのだろうか。

「公的サービスが減って、自費でまかなう部分が増えることになるでしょうね。ここ10年、20年のうちに、地域格差も深刻化していく。不便な場所に住んでいるお年寄りは市街地に引っ越さなければ、ケアを受けられなくなってしまう。た

 だし、希望はあります。介護は情報戦。いいケアマネージャーやヘルパーに会うことができれば、情報を得て、適切なサービスを受けられるかもしれない。ネットワークを作っておくことです」

取材・文/渋井哲也(ジャーナリスト)


《PROFILE》
結城康博さん ◎1969年生まれ。淑徳大学教授。経済学修士、政治学博士。専門は社会保障論、社会福祉学。近著に『突然はじまる! 親の介護でパニックになる前に読む本』(講談社)