飽きることない蒸留所めぐり

敷地外から移築した旧竹鶴邸。エントランスはリタの故郷の家を模してデザインされたという
敷地外から移築した旧竹鶴邸。エントランスはリタの故郷の家を模してデザインされたという
【写真】ニッカウヰスキー蒸留所と宮崎本店の見どころ満載!

 製造工程の建物を過ぎてしばらく進むと、『マッサン』ファンなら見逃せない旧竹鶴邸が! 見学できるのは玄関とホールのみだが、和洋折衷の造りや、リタの誕生日に政孝が贈ったメッセージ入りの本に、2人の愛の深さが垣間見れる。壁に飾られたリタの写真は女優のように美しかった。

 続いて、登録有形文化財の1号貯蔵庫の内部へ。奥にモルト原入りの樽が並び、ウイスキーに通じる香りが立ちこめ、心が躍る。

「熟成期間は同時に造った原でも樽ごとに違います。ブレンダーが定期的に香りを確認し、決めています」

見学可の1号貯蔵庫
見学可の1号貯蔵庫

 敷地には長さ50mの貯蔵庫が計26棟、樽はいくつあるのやら。その樽もまた、1つずつ職人の手で造られ手入れをされている。

 その向かい側は、貯蔵庫2棟を利用したウイスキー博物館。中へ入ると、まずウイスキーの知識にまつわる展示があり、奥には高級ウイスキーも並ぶ試飲スペースが。博物館では、政孝のウイスキー造りの軌跡をたどることができる。リタとの暮らしも紹介されていて、それを見て「涙する女性も少なくない」と三上さん。『マッサン』放送当時には年間約90万人が、放送から3年がたつ昨年も58万人を超える見学者が訪れる人気ぶりだ。

 博物館の奥に位置するニッカ会館の2階には、お待ちかねの無料試飲会場がある。1人につき3杯限定で、現在は(1)=余市蒸溜所のモルト原のみを原料とした『シングルモルト余市』(2)=亡くなったリタへ捧げて造った政孝渾身の『スーパーニッカ』。丸みを帯びたボトルは「リタの涙」と称される

単一の樽から蔵出ししたシングルカスク余市10年(15cc1000円)を試飲! なんとも深い味
単一の樽から蔵出ししたシングルカスク余市10年(15cc1000円)を試飲! なんとも深い味

 (3)アップルワイン=ウイスキー完成前に販売を始めたロングセラー、の3種類。会場で水、氷、炭酸水のサーバーを自由に使え、おつまみも販売されているので、好みの飲み方で楽しもう。

 加えて、同・1階にはレストラン「樽」があり、北海道の食材を使ったメニューが好評。蒸溜所内には見どころがたくさんあるので、ここで食事をとり、時間をかけて回るのもおすすめだ。また、ウイスキーはもちろん、ニッカウヰスキーのオリジナル商品、地元の海産加工物やお菓子などの種類豊富な売店もある。

 それにしても正門からここまでよく歩いた。聞けば広さ4万坪もあるそうで、竹鶴夫妻の大きな夢を実現し続ける余市蒸溜所は、敷地もまた大きかった。