東日本大震災で見えた「人格」

 地元熊本はもとより、大阪でもくまモンの認知度が上がってきた2011年のお正月、くまモンあてに100通ほど年賀状が届いた。それをしみじみと読んでいるくまモンを見て、小山薫堂さんは、「くまモンの人格ができてきた」と実感したという。ちなみに現在、くまモンに届く年賀状は6000通を超える。彼はすべてに目を通して返事を出している。

「くまモンのお辞儀が大好き。ここに彼のすべてが込められている」(小山薫堂さん)
「くまモンのお辞儀が大好き。ここに彼のすべてが込められている」(小山薫堂さん)
【写真】くまモンの年末年始のご挨拶、フランス出張の写真など

 九州新幹線全線開業の前日3月11日、前日のセレモニーでくまモンは大阪駅に華々しく登場、テレビの全国放送にも生出演する予定だった。だがスタンバイしていたそのとき、東日本大震災が起こった。M9という大地震でセレモニーは中止。くまモンの活動は自粛となった。

 それでも、知事は立ち止まらなかった。2週間後、くまモンに大阪での東日本大震災のための募金活動を命じたのだ。大阪でのそれまでの活動が役に立った。くまモンは必死で街頭に立ち、関西のキャラクターやマスコットの友人たちも参加してくれた。

 7月には、知事と一緒に宮城県にも訪れている。このとき、津波被害が大きかった東松島市の海岸に佇んだくまモンは、海に向かって深く、長い間、頭を下げた。それ以降くまモンは、「がんばろう東北」を胸に抱きながら活動していた。「やんちゃで好奇心旺盛な男の子」だが、彼はいつでも自分の役割を認識している。そして、その後何度も東北の被災地を訪れ、保育園などで熱烈な歓迎を受けている。

くまモンの心持ちを大事にしながら地道に活動してきました」

 磯田さんは何度もそう言った。くまモンの心持ち、それは「人に寄り添う」ことなのだ。

 この年の11月、くまモンは「ゆるキャラRグランプリ2011」のグランプリを受賞する。全国の人が、それまでのゆるキャラのイメージとは違い、機敏で、しゃべらないのにコミュニケーションがとれる「くまモン」という生きものに衝撃を受けた。くまモンと県庁の努力の成果が表れたのだ。そして、ここからくまモンの前代未聞の快進撃が始まった。

「私たちはくまモンを天からの授かりものだと思っています。自治体のキャラとして成功したのは県庁の戦略とか演出とか言われるけど、それだけでは片づけられないものがあるんですよ。よく芸能界で100年にひとりの逸材という人が出てきますよね。くまモンはそういう存在。この人に関わりたいと誰にでも思わせる何かを持っているんです」(成尾さん)