白鵬の貫禄

 そんな中でも気迫をみなぎらせていたのが、横綱・白鵬だった。

 それまで土俵下や花道などでファンに写真をバシバシ撮られながら入念な準備運動に励んでいた白鵬、そろそろ稽古もお終いか?と思われる頃、のっしのしと土俵に戻ってきた。

 春日野親方が「もう、時間ないよ」と告げたけど、横綱はニヤリとして「じゃ、十番ぐらい取りますよ」なんて笑って言って、二人の視線がバチバチっと交わされ、横綱は土俵に上がる。むふっ、二人のやりとりが面白い。

 すると白鵬は正代(しょうだい)と8番、実践的な稽古をして、全部白鵬が勝った。正代は花道のむこうまでブッ飛ばされたり、土俵際でギリギリ競ってからガンっと押し出されたり。

正代に稽古をつける白鵬(筆者撮影)
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 白鵬の気迫に土俵の空気はたちまちピピリッと引き締まり、館内の興奮もどんどん高まって何度も拍手が起こった。最後に土俵を締めるのが横綱の役目。さすがだ。

 白鵬は膝の手術で九州場所を休場していたが、圧倒的に身体が動いている。なんでも膝の手術後に「食べないことで身体を休ませメンテする」杏林予防医学研究所の山田豊文先生が勧める断食法を実践して身体を作り直したそうで、徹底した自己管理で強い身体を作っている。

 2018年年は相撲界の世代交代が盛んに言われたけど、そう簡単にこの横綱には勝てないよ! そう思わせるに十分な稽古が終わると、納得顔の春日野親方の合図ですぐに序二段からの取組が始まった。

 ちなみに、冬の巡業最終盤には参加するのでは?と言われていた稀勢の里の姿は見えなかった。なんだかそれがモヤッてしまった。


和田靜香(わだ・しずか)◎音楽/スー女コラムニスト。作詞家の湯川れい子のアシスタントを経てフリーの音楽ライターに。趣味の大相撲観戦やアルバイト迷走人生などに関するエッセイも多い。主な著書に『ワガママな病人vsつかえない医者』(文春文庫)、『おでんの汁にウツを沈めて〜44歳恐る恐るコンビニ店員デビュー』(幻冬舎文庫)、『東京ロック・バー物語』『スー女のみかた』(シンコーミュージック・エンタテインメント)がある。ちなみに四股名は「和田翔龍(わだしょうりゅう)」。尊敬する“相撲の親方”である、元関脇・若翔洋さんから一文字もらった。