「地面が削れている部分がありますが、少し周囲とは色が違いますよね。これは自然に削れた跡ではなく、動物が削った跡なんです。鹿は土を掘り起こして何かを食べる可能性は低い。そうなると猪の可能性が高いと思います」

 と罠を仕掛けたポイントについて丁寧に解説。

安田さんは「地面が茶色く削れている部分は猪が通った跡の可能性が高い」と指でさし示す
安田さんは「地面が茶色く削れている部分は猪が通った跡の可能性が高い」と指でさし示す
【写真】山の中で罠を仕掛ける興膳さんと安田さん他

「くくり罠というもので、動物が罠を踏むとワイヤーが足に引っかかります。太さ約4ミリの金属製ワイヤーなので、100キロ以上の重さに耐えられる。それでも100キロ級の猪や熊の成獣が引きちぎることがあります。自分の手足をちぎってでも逃げる場合もあります。また、暴れることによってその足や周囲の部位の肉が傷みます。だからこそ毎日、こまめに見回っています

銃は頭か脊髄を狙う

 獲物を確保する方法は二つ。銃で仕留めるか、罠にかかった獲物を放血するか。

「最初は罠を仕掛ける免許を取ったり、地元の猟師さんに教えてもらったりしながら」

 と、手探り状態だったと打ち明ける前出・興膳さん。

 地元福岡の知人ラーメン店主に掛け合い猪の骨で豚骨ラーメンならぬ”猪骨ラーメン”を開発した。元の猟師に無料で振る舞った結果、猟師との関係が深まり、『猪鹿庁』の活動もスムーズになっていったという。

 銃で仕留める場合は、

胸から上を狙います。内臓を撃ってしまうと大腸菌などが周囲の肉に広がって、食べられなくなってしまうので、極力そこは狙いません。

 腿の部分も一番肉が取れるので、狙わないように気を付けています。でも、動いているので難しいですけど」(前出・興膳さん)

「頭そのものか首の脊髄が狙うポイントです。一発で仕留めたいと思っています」(前出・安田さん)

 ふたりに共通するのは、命を奪った肉を無駄にすることなくなるべく食肉にする、資源にするという発想。そして、獲物にできるだけ苦痛を与えたくないという思いだ。