キャッシュレス化は止められない

 こうしたスマホ決済をはじめ、クレジットカードや電子マネーの利用を推進し、現金(キャッシュ)のやりとりを減らしていこうとする官民挙げての取り組みがいま、急速に加速している。

「いまは街のあちこちにATMがあって、いつでも手軽に現金が手に入り、わざわざキャッシュレスにしなくても不自由なく生活できる。特に中高年世代は“電子マネーってなんだか信用できない”“現金でないと落ち着かない”という人も多い。ただ今後、そうも言っていられなくなります」

 と加谷さん。理由をこう解説する。

「銀行業界は全体的に経営が苦しく、維持費が年間何兆円もかかるATMを減らしていこうとしています。一方、現金をやりとりする小売店などは人手不足で、会計や両替など現金を管理する手間が惜しい。完全にキャッシュレス化すれば、店の人手が3分の2ですむというデータもあるほど。

 日本経済全体で考えたときに、実は、現金の維持にかなりコストがかかっているのです。キャッシュレス化が便利かどうかということよりも、企業にコスト面で余裕がないことが理由ですから、この流れは止められません

 実際、政府が電子マネーによる給与支払いの解禁を打ち出すなど、キャッシュレス化へ向けた動きはとどまる気配がない。とはいえ、根強い現金主義で知られる日本。左上の表のように、まだまだキャッシュレス後進国といえる。

 このまま進むと、私たちの生活はどう変わるのか。消費生活ジャーナリストでカード評論家の岩田昭男さんはこう指摘する。

「キャッシュレス化が先行している欧米や中国の動きをみると、よくわかります。お店はもちろん、屋台に至るまで“現金お断り”の店が増えるでしょう。生活するうえで、クレジットカードや電子マネーは必須という世の中になります

 変わりゆく時代をとらえ、おトクに乗り切っていきたいものだ。


《PROFILE》
あんびるえつこさん
生活経済ジャーナリスト。著書に『消費者教育ワークショップ実践集』など

加谷珪一さん
経済評論家。著書に『億万長者への道は経済学に書いてある』『大金持ちの教科書』など

岩田昭男さん
消費生活ジャーナリスト。著書に『挑戦と逆転の切り札』『キャッシュレスで得する「お金の新常識」』など