これは僕個人の勝手な思いなんだけど、原田芳雄さんや萩原健一さんや松田優作さんのような、僕自身が若いときに憧れていた俳優さんがいて、『ギフト』では、そんな男性像を作りたいと思っていた。拓哉なら、それができちゃうんじゃないかという期待感もあったしね

 この作品には、“人間は失敗をしても、生まれ変わってやり直すことができる”という裏のテーマがあった。

「主人公が過去にとんでもない失敗をしていて、それから逃れたいがために記憶喪失になっているという設定でした。物語が進んでいくと、どんどん過去の自分と向き合わなければならない状況になり、過去の傷を思い出しながら、それをひとつひとつ清算していく。そして蘇生して、新しい人生を生きていくというストーリーでした」

もっと大人の役をしないと!

 世間が持つ“アイドル・木村拓哉”というイメージから脱皮することを暗示するシーンもあった。

ドラマの冒頭で、クローゼットから全裸の拓哉がゴロンと転がり出てくるのは、恋愛しない拓哉が“生まれ出てくる”というイメージだったね

 現場ではセリフの言い方から動きまでひとつひとつすべてを考え抜いていたという木村。本番になれば室井滋、小林聡美、倍賞美津子のようなベテラン女優陣とアドリブ合戦。階段から落ちるシーンで肩を脱臼してしまうが、その後も撮影を続けたという。

「“こうしたらどうだろう”“ああしたらどうだろう”と自分の想像力で演技を提案してくる拓哉を見ていて、これはいいかげんに書けないなって思ったよ」

 木村が悩む“何をやってもキムタク”問題については、飯田氏独自の見解を語った。

20年たっても、拓哉はまだ若い男の役ばかり。それは世間が望んでいることで、少年っぽい俳優がずっと人気を集めているからしかたがないんだけど。松田優作さんや萩原健一さんには女を口説く役ができるけど、拓哉はそういうのが似合わない。女性のほうから寄ってくるというスタンスになっているからね

 だが、木村の中に“松田優作”像を見た飯田氏は続ける。

「グッチのスーツで都会を駆け抜ける『ギフト』の木村拓哉は本当にキラキラしていた。もっとも美しい瞬間をとらえたと思っている。彼は今や日本を代表する俳優になっているし、これからも日本の映画やドラマを引っ張っていかなきゃいけない存在でしょ。40歳を過ぎたし、もっと渋くてカッコよくて、みんながついていくような大人の役をしないと! 松田優作さんのあとを担うのは、やっぱり拓哉しかいない気がする

 みんなが見てみたい“キムタクらしくない木村拓哉”を築けるのも、やはり木村しかいないのだ。