“放置子”とその家族の特徴は?

 呼ばれてもいないのに他人の家に上がりこみ、飢えたように甘える。常識に欠けていて、“そろそろ帰ってくれないかしら?”といった空気を読むことができない。親切心から付き合っていると、心底疲れ切ってしまう。

「こうした子は“放置子”と呼ばれています。インターネットの中で使われている言葉で、福祉などの専門用語ではありません。

 だから定義することはできませんが、ネットの世界では、“わが子がどこで何をしているのか親が関心を持たず、ほったらかしにされている児童”を示すのが共通認識になっています」

 こう語るのは、松蔭大学コミュニケーション文化学部の深谷野亜准教授だ。

 深谷准教授によると、10年ほど前からネット上で、“実はこんなことが……”と、くたびれきった口調で語られる中で自然発生した言葉だという。

 哀れで、凍りつくほど孤独で、それでいて手に余る子どもたち。親からは愛情や居場所を与えてもらえず、必死になってそれを探している姿なのだ。そしてほぼ小学生だけの問題であるという。

「放置子も中学生になれば、自分で生きていける場所を見つけます。いい出会いがあればいいのですが、一時の愛情を求めて恋人をつくり、その家に入り浸ったり。半ば家出のような形で、渋谷などの繁華街で同じような境遇の子と夜通しつるみ時間をつぶすこともあります」(深谷准教授)

 “呼ばれもしないのに他人の家に上がりこむ”行動には、実は筆者自身にも身に覚えが。

 大量のマンガ本を持つ近所の高校生のお兄さんの部屋に勝手に上がりこみ、マンガ本を読みふけっていた記憶があるのだ。私って、もしかして放置子だったの……?

「そのお兄さんの親御さんが、“勝手に家に入って困りますね”と、あなたのご両親にクレームをつけたとしたらどう反応したでしょう? 親であれば、とりあえずは“すみません”と謝るのが普通です。そのあとで子どもを叱る。しかし、放置子の親御さんは“ああ、そうですか。だったら追い出してください”と意に介さない。

 そして子どもが帰ってきても“行ってはダメ”とも言わない。SNSやゲームなど自分が今していることが第一で、親であるという意識がまったくない。親の意識がないから子どものしていることに無反応。これが放置子の保護者共通の特徴なのです」(深谷准教授)

 こうした子どもへの無関心は、明らかにネグレクト(虐待)である。そしてネグレクト状態に置かれた子どもの魂の悲鳴が、あの過剰なつきまといや甘えであり、“あんたのお母さんは私のほうがずっと大事!(あんたがいなければ私がいられる)”という悲痛な叫びなのだという。