またバイトテロの助長も広げたくないとする笹本氏。その対策として、企業や経営者が自分の声で情報を発信し、顧客とコミュニケーションを取っておくことが重要だという。

 自分の言葉に責任を持ち、お互いの理解を含める努力をすることが秘訣で、Twitterもそうした声を集められるようにする意味で、「検索」機能の強化に取り組んでいくという。先述のようにツイートの検索は日本市場の特徴でもあり、ここでも日本の使われ方から機能が作られようとしていた。

日本で社会のインフラ化をするには?

 言葉に対してより敏感で、140文字で他の言語より多くを伝える事ができる日本語は、Twitter活用の基盤となった。

 しかし現在、コミュニケーションは動画やライブビデオへと移っており、よりライブ性がある情報をTwitterで消費する世界が待ち受けている。そうした中で気になるのが、プライバシーの問題だ。特に2018年は、Facebookのユーザー情報の流用が大きな問題として取り沙汰された経緯もある。この点について聞いた。

「個人情報はTwitterの問題意識の中では一丁目一番地で、死活問題として捉えています。公開している場、自由に発信している場という点で、その重要性はひときわ高い。情報の開示についても、原則として捜査令状や裁判所命令がなければ行いません。

 その一方で、災害や事件・事故などで緊急性のある場合については、その都度レビューして柔軟に対応する体制を整えていますし、2年前から問題を検出するアルゴリズムの開発に力を入れてきました。

 Twitterも広告ビジネスを行っていますが、他のSNSと根本的に異なる点は、個人をデモグラフィックではなく、インタレストでターゲットしている点です。つまり、住んでいる場所や年齢、性別などの個人情報はなく、フォローや発言など興味を反映するTwitter上の活動でターゲットしています」(笹本氏)

 また、企業に対する活用の啓蒙だけでなく、政党や地方自治体、官公庁に対しても、Twitter活用のサポートを他のSNS企業とともに取り組んでいるそうだ。

 例えば内閣官房や東京都消防庁がTwitterアカウントを運用しており、最新の災害情報等についての情報を発信している。これも、東日本大震災の時に起きたデマの問題に対処する方法として、「公式情報」がTwitterの場に上がってくることの重要性を反映している。

「愛知県警は、援助交際を募集するツイートに対してTwitterで返信メッセージを送る取り組みを始めています。こうして、犯罪に巻き込まれたり、法律違反を犯す可能性を未然に警告しています。Twitterとして、援助交際の媒体として使われることは望んでいませんが、危険性のあるツイートをいかに早く察知するか、という対処方法を考えています」(笹本氏)

 今は文字中心からライブビデオ中心へとTwitterの情報の種類にも変化が始まっている。文字だと情報量の観点から日本語が非常に有利だったが、動画になると今度はアメリカでの活用が強まることになる、と笹本氏は予測する。

 アメリカのトレンドを日本にいち早く持ち込むことで、日本市場のユーザーがいいとこ取りでTwitterを楽しめる環境を整えていく。そんな未来像を披露してくれた。


松村 太郎(まつむら たろう)◎ジャーナリスト 1980年生まれ。米国カリフォルニア州バークレー在住のジャーナリスト・著者。慶應義塾大学政策・メディア研究科卒。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)、キャスタリア株式会社取締役研究責任者、ビジネス・ブレークスルー大学講師。著書に『LinkedInスタートブック』(日経BP)、『スマートフォン新時代』(NTT出版)、監訳に『「ソーシャルラーニング」入門』(日経BP)など。