逮捕の決め手になった犯行の一部始終は、防犯カメラに残されていた。そこには、

《3月15日朝4時13分に従業員が出社。その後、同18分に、青いマスクで顔面をすっぽり覆った神尾容疑者が、周囲を何度も見渡しながら、長靴の置いてある従業員玄関口に侵入。長靴をとっかえひっかえ手に取り、においをかぐようなそぶりで吟味し、2足の長靴を盗み出て行く─

 という犯行の全貌が鮮明に映っていた。

8回侵入し、計14足盗んだ

防犯カメラには神尾容疑者が長靴を盗む瞬間が鮮明に映っていた
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 冒頭の「上履き泥」同様、金目のものには一切手をつけず、ただ一途に狙ったのは長靴だけ。

「とにかくびっくりですよ。長靴を何に使うんだ、と。何がいいのか。最初は女性ものの長靴が盗まれたので、そういう趣味なのかな、と思いましたけど、供述では“働く男の長靴が好きだった”とか言ってるみたい」(前出・社長)

 昨年12月以降、神尾容疑者は同社に8回にわたり侵入し、計14足を盗んだ。

 逮捕前、神尾容疑者らしき不審人物を見かけた従業員がいた。

「早番の従業員が出勤前に工場の近くのコインパーキングで自転車にまたがっている中年男をたびたび目撃していました。その男が現れた後に盗難が起きていたので、“あいつなんじゃないか”って話していたんです」(同)

 突然、長靴がなくなったことは同社の業務にも響いた。

「一応ストックはありますがサイズが合わない場合もある。代替えの長靴が用意できず靴店が開くまで仕事ができなくて困っていた従業員もいます。長靴は私たちの仕事には欠かせないものなんです」(同)

 さらに人間関係にも影響が。

「長靴が盗まれた従業員は“嫌われているんじゃないか”と不安に思っていたそうです。いろいろ探しても出てこないし、職場の中でギスギスした雰囲気になったこともありました」

 と解決に安堵の表情を見せながらも、心配そうな表情で振り返る同社社長。

逮捕後、警察官に囲まれ現場を訪れる神尾容疑者が防犯カメラに残っていた

 14足の長靴は現在、証拠として警察に保管されている。

「神尾容疑者の自宅からはうちの長靴のほか、築地などで盗んだとみられる長靴や作業靴が出てきたみたい。うちの長靴の返却はまだですが、いりませんよ。何に使ったかわからないし返されても困る

 と、社長は本音を吐露する。

 冒頭の上履きも、それこそ容疑者が何に使っていたのかわからないため、返却されても困るのが本音だろう。

 靴フェチなのか、足のにおいフェチなのか。同時期に起きた、マニアックすぎる2件の窃盗事件。くしくも2人が逮捕された3月15日は日本靴連盟が定めた『靴の日』だった。模倣犯だけはごめんこうむりたいものだ。