観察するかぎり、おおよそ5分に1人の割合で踏切を渡る人がいた。

 JRによると、同踏切の事故は過去5年起きていない。

「10年以上前かな。地元で有名な酔っ払いの男性が電車に轢かれて亡くなったのは覚えています。危ないという声は多いけれど、しょっちゅう使っている住民は慣れっこだから大丈夫なんですよ。踏切を自由に横断したいから、むしろ遮断機も警報機もつけないでくれと思っているし、JRにも要求しています

 と近所の60代男性。

 たしかに、慣れている住民の渡り方は違う。線路を1本越えるごとに左右を確認しながら、ゆっくり落ち着いた足取りで渡っている。慣れていない人は、ほとんど左右も確認しないで足早に渡る。線路と線路の間にはスペースがあるので、そこで止まったり、待機すればいいのだ。

 一方、近隣住民のあいだで「事故時に“大きな警笛”が聞こえなかった」と、いぶかしむ声がある。70代男性が言う。

「大きな警笛もなく電車が止まったから“あれっ、何かあったのか”と思って近づいたら人身事故だった。警笛には大小あり、大きいのは1日5回ぐらい、小さいのはそれこそ無数に鳴らされている」

運転士は警笛を鳴らしたのか

線路わきには花が手向けられていた
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 複数の住民から同様の指摘があったため、前出のJR東日本横浜支社に質問した。

 運転士は事故当時、警笛を鳴らしたのか。

 対面取材は断られ文書で、

「運転士は汽笛を鳴らしております」と短い回答があった。

 そこで警笛の大小に触れて追加質問すると、さんざん嫌がった電話取材に担当者が応じて次のように述べた。

「山の根踏切のような警報機や遮断機が設置されていない踏切を通過する際は、人がいるいないにかかわらず、乗務員は踏切の手前約300メートルの地点で“ファ~ン”という通常時の汽笛(小さな警笛)を鳴らすことになっています。

 今回の場合、もっと近い位置で“ファン、ファン、ファ~ン”という非常時の汽笛(大きな警笛)は鳴らしていないと運転士は言っています。ぶつかってから気づいたというのが本当のところなんです

 つまり、事故車両の運転士はマニュアルどおり小さな警笛は鳴らしたが、人影に気づかなかったため大きな警笛は鳴らせなかったということ。

 国の運輸安全委員会は「事故の原因究明や再発防止について調査に着手している。1年をメドに調査報告書をまとめる予定」と話す。

 報告書がまとまる前に、再び死亡事故が起こらないという保証はない。


やまさき・のぶあき ◎フリーライター 1959年、佐賀県生まれ。大学卒業後、業界新聞社、編集プロダクションなどを経て、'94年からフリーライター。事件・事故取材を中心にスポーツ、芸能、動物虐待などさまざまな分野で執筆している