どんどんやせていった体重は52キロにまで落ちた。編集の岩切さんもハラハラしながらその様子を見守った。

「一時は本当に心配でした。インタビューに立ち会って、帰るときにそこで別れるのが不安なんです。見るからにすごくしんどそうでしたね」

自身の子育てをテーマに家族を登場させた作品『親バカ日誌』より
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 毎年初めに行われる白泉社のパーティーでは、会う人全員に「魔夜先生、大丈夫ですか?」と聞かれた。立っていられず、イスを用意してもらって座って過ごしたという。

酒を飲み続ける夫、悩む妻

 自宅には税務署の職員もやって来た。

「税務署の人が来て、なんとか申請してくださいって言うんです。しばらくしたら、うちでやるからって言って、書類を全部持って行って、税務署でやってくれました。税務署の人も優しいんだなって思いましたね」

 芳実さんは借金があった事実に驚く。バレエ教室の売り上げは魔夜さんに渡していた。そんなにも窮乏していたとは知らなかったのだ。

 仕事場を借りていた大家には1200万円の家賃の支払いがたまっていた。仕事場は引き払ったが「大家さんがいい人でね、ずっと待っていてくれたんですよ」と魔夜さん。

 だが、目の前には莫大な金額が記載されている。日々の生活費は、趣味で買い集めていた宝石を売ってしのいだが、それも底をついてしまった。自宅が担保になったが、手放すとバレエ教室での収入がなくなってしまう。

 周囲の理解もあり、なんとか自宅を売らずにやり過ごすことになったが、その陰で芳実さんは必死に現状を変えようと努力した。

「そのころは、美容院にも行かない、服も化粧品も買わない。家計簿をつけて、1円までチェックしていました。スポーツクラブでバレエのレッスンのアルバイトやチラシ配りもしました」

 一方、夫の魔夜さんは酒を飲み続けている。芳実さんは悩んでいた。

「子どもたちが自立するまで家計を支えなければいけないと思っていました。一緒に目標を目指して頑張ろうというなら、いくらでも頑張れるんです。私はバレエをやっているので、健康に関してはエキスパートです。ノウハウも持っている。でもそれを主人に伝えることができないんです。コミュニケーションができなくなっている感じが何年も積み重なっていました。会話ができないうえに、翌日になったら、介抱したことも、話し合いをしたことも忘れてしまうんです