他人事からジブンゴトへ

 沖縄県民は県外移設をどう思っているのか? 私は、沖縄の街角で複数人に意見を求めた。すると、その多くが「ぜひ“本土”で引き取って」、「“本土”の市民が納得すればOK」というものだった。

 一方、辺野古の米軍基地、キャンプ・シュワブ前で展開する「基地絶対反対」運動に参加する人の意見は異なる。

「“本土”から応援に来る人が多いなか、引き取ってと言うべきでない」、「基地はここでなくす。それしかない」などの声が目立った。

 運動のリーダーである『沖縄平和運動センター』の山城博治議長も「基地問題解決にはさまざまな方法がある。だが、ここは多くの人に支えられ基地撤去を目指す現場である以上、リーダーたる私が県外移設に賛成できません」と明言した。

周辺野古のほとんど土砂搬出が続く安和でも抗議活動を行う山城さん
周辺野古のほとんど土砂搬出が続く安和でも抗議活動を行う山城さん
【写真】岸本さんが配っているチラシには文字がぎっしり!

基地絶対反対」も「県外移設」も辺野古基地の建設阻止との方向性は共通している。

 特筆すべきは、「本土」で「沖縄の米軍基地を引き取る」運動が始まったことだ。

 '15年、大阪府で市民団体『沖縄差別を解消するために沖縄の米軍基地を大阪に引き取る行動』(引き取る行動・大阪)が設立された。

 松本亜季代表は、かつて辺野古で数か月間の座り込みを行い、そして出身地・大阪で10年間、「基地絶対反対」運動を展開。その過程で、多くの府民が「沖縄は大変だ」と口にはするが、沖縄に問題を押しつけた「本土」の責任に無自覚であることを痛感した。この問題をジブンゴトとして考えてもらうためにも引き取り運動を始めたのだ。

 大阪の動きに、ウシさんは「あ、やっと思いが届いた」とうれしさを覚えたという。

 引き取り運動は現在、全国10か所で展開され、岸本さん、栄子さん、そしてウシさんは請われれば赴き、市民に「本土」の責任を訴えている。

 議会も動いている。市民有志『新しい提案実行委員会』が「普天間基地の県外・国外移設を国民的議論により公正で民主的に解決する」との意見書採択を求める陳情書を全国の自治体に提出したところ、昨年末の東京・小金井市議会での採択を皮切りに、7月11日時点で29議会が採択するに至っている。

 また、朝日新聞は昨年9月、毎日新聞も今年3月に「基地引き取り」の世論調査を行うなど、数年前まで「本土」では見向きもされなかった県外移設への意識は徐々に広がってきたと言える。

 ただし、栄子さんは「でも、基地はカゴに担いで持っていけるものではない。県外移設を国会で徹底審議してほしい。だって基地が必要と言っているのは議員でしょ」と国の責務を訴え、同時に県外の市民にも、「小さな集まりでも各地で次々と引き取り運動が立ち上がれば、必ず変化は訪れます」と強い期待を寄せる。

 読者は沖縄の声にどう応えようか。

(取材・文/樫田秀樹)


樫田秀樹 ◎ジャーナリスト。'89年より執筆活動を開始。国内外の社会問題についての取材を精力的に続けている。『悪夢の超特急 リニア中央新幹線』(旬報社)が第58回日本ジャーナリスト会議賞を受賞