「その記事を読んだ佐々井さんがとても喜んでいて、“あいつ、本を書けばいいのに”と言っていると人づてに聞いたんです。佐々井さんは自分が有名になりたいわけではなくて、インドの仏教事情をもっと知ってもらいたいから本を書いてほしいんだろうなぁと思いました

 すでに80歳を越えるご高齢ですし、“よし、書こう!”と決め、いちばん最初に書籍の執筆依頼をくださった文藝春秋の方に連絡をしたんです。そしたら、すぐに予算が組まれて、“気が変わらないうちに行ってきてください”と言われました(笑)

色に溺れた佐々井青年

 佐々井秀嶺氏は岡山県で生まれ、成長とともに女性に対して並々ならぬ関心を抱くようになった

 色に溺れ、3度の自殺未遂を経て仏教に出会い、タイへ渡ったのちにインドの中央に位置する都市ナグプールへとやって来た。波乱万丈のその人生には、しばしば神秘的な瞬間が訪れている

「子どものころにひどく衰弱したとき、山伏のお告げにしたがって赤い目の蛇の心臓を150個も200個も飲んだとか、3度目の自殺を図ろうとしたときに妙見菩薩の声で思いとどまったとか、大乗仏教の開祖・龍樹のお告げを聞いてナグプールに来たとか

 つっこみどころ満載ではあるのですが、でも、どのエピソードも本当らしいんです」

白石あづささん 撮影/北村史成
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 天に導かれるように現在の地位までたどり着いた佐々井秀嶺氏は、妬み嫉みの対象になりやすい人物でもある。実は、白石さん、インドでの取材中にしばしばスパイ映画さながらの場面に直面したという

「私はおいしいものが大好きなのですが、佐々井さんには“誰かにもらったものを食べてはいかん”、“お前は食いしん坊だから毒殺されないか心配だ”としょっちゅう言われていました。実際、佐々井さんは何度も毒殺の標的になっているらしいんです

 あと、2週間のインド滞在中は基本的に佐々井さんに密着していたので、暗殺される可能性がある場所へも一緒に行くはめになり……。無事に帰って来られてよかったです(笑)」 

偉大なる存在の佐々井秀嶺氏だが、その日常は日本のお坊さんのイメージとは大きくかけ離れている。