食事は近所の信者の方々が持参する料理で、住まいは12畳ほどの質素な部屋です。その部屋で結婚相談とか、娘さんの留学先のトラブルといった市井の人たちの悩みを聞き、解決策を講じたりするんです。

 佐々井さんは“民衆を守るのが僧侶の役目だから”とおっしゃっていて、行政では対応できないことを全部、引き受けているように感じました

 白石さんは、佐々井氏から深く学んだことがあるという。

「佐々井さんはよく、“神も仏もありません。泣いてすがるんじゃなくて、寺に集まり相談し助け合え”と説法しています。日本でもみんなで集まって相談できる場所があれば、引きこもりとか不登校といった問題を解決できるんじゃないかなぁって。

 佐々井さんの活動を間近で見るうちに、そんな考えを持てるようになりました

ライターは見た!著者の素顔

 佐々井氏に日本食を食べてもらいたい一心で、食材持参でインドに渡ったという白石さん。

「高野豆腐や乾燥わかめ、鮭の燻製、缶詰といった食材と、めんつゆ、だし、お酢などの調味料を持っていきました。滞在した宿坊には台所がなかったので、湯沸かし器で煮物や汁物を作ったんです。

 佐々井さんはすごく喜んで食べてくれたのですが、だんだん舌が肥えて“今日のは味が薄い”などと言われるようになり……。取材期間が2週間でよかったです(笑)」

『世界が驚くニッポンのお坊さん佐々井秀嶺、インドに笑う』白石あづさ=著 文藝春秋  ※記事の中の写真をクリックするとアマゾンの紹介ページにジャンプします
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PROFILE ●しらいし・あづさ。日本大学藝術学部美術学科卒業。フリーライター&フォトグラファー。地域紙の記者を経て約3年の世界放浪へと旅立ち、帰国後は旅行雑誌や週刊誌などに執筆。これまでに訪れた国は100以上にのぼる。著書に『世界のへんな肉』など。

(撮影/北村史成 取材・文/熊谷あづさ)