「父が五男で、うちにお墓がなかったので、母が亡くなったときに買いました」と言うのは、10年前から文京区内の自動搬送式納骨堂を所有する、板橋区の北口佳恵さん(仮名=41歳)。

 霊園や寺院内の墓地にお墓を建てるより、価格が安かったのが最大の魅力だったそうだが、「父は“土の上のお墓”にこだわりました。でも、将来、私がお墓を継ぐことを考えると、お参りのしやすさを優先しようよ、と納得してもらいました」。

 北口さんはひとりっ子だ。すでに父親は高齢だったため、北口さんが自分でローンを組んで購入した。以来、月イチ、仕事帰りに、喫茶店で亡き母が好きだったコーヒーを買ってお参りに行っている。そのコーヒーを参拝ブース内の墓前に供えた後、自分で飲み、まるでカフェでのひとときのように、「コーヒーを媒介に母と会話する時間」を過ごしているという。こうしたお参りの仕方もできるのだ。

嫁ぎ先のお墓に入りたい女なんていない

 首都圏では、自動搬送式の納骨堂が、建設中も含め約30か所を数え、完売すれば12万〜15万人が使用することになる。むろん、夫婦や家族ではじめから意見が一致して購入を決めるケースもあろうが、先に気に入るのは、圧倒的に女性だ。「カジュアルすぎる」「抵抗がある」と反対する夫を妻が説き伏せた例も少なくなかった。

「『郊外の一戸建てから、都心のマンションへ』『大家族から核家族へ』という、何十年も前に起きた住まい方の変化が、今、お墓にも起きているのです」と、納骨堂の販売担当者が説明する。

 納骨堂は、草引きや掃除といった面倒なことが必要なく、楽だ。マンション住まいが多い中、お墓も「戸建て」でなくていい。核家族で暮らしているのに、お墓で「顔も知らない先祖」まで引き受けたくない。とりわけ女性が、そう考えるのは自然の流れだろう。

 中野区の吉田恭子さん(仮名=75歳)は、田舎のお墓を、いわく「お寺さんにお任せし、残したまま」で、このほど都心の納骨堂に自分たち夫婦用のお墓を買った。「舅(しゅうと)、姑(しゅうとめ)と同じお墓に入るのは勘弁して。お墓に入ってまで『嫁』は、失礼させていただきます、って気持ちなので」と言い、「嫁ぎ先のお墓に入りたい女なんて、私の周りにはひとりもいないんじゃないかしら」と付け加えた。吉田さんには、夫の母を晩年に引き取り、8年間、介護した経験があった。