寝る間も惜しんで研究した20代

MA 高3になって進路を決めるとき、親の意向に従いたくなくて、当時はロンドンにいた叔父のところに家出同然で行ったんです。そのとき、世界的な美容師だったヴィダル・サスーンの店にカットに行きまして。

桜沢 ヴィダル・サスーン! 「ハサミ一つで世界を変えた」と言われる、神様のような美容師ですね。実は『こまどりの詩』に出てくるジェム・サンダースは、彼をイメージしているんです。

MA すぐわかりました(笑)。で、お店の一番上の方にカットしていただいたのですが、そのときに気づいてしまったんです。「あ、私の後頭部は欧米人と違って絶壁なんだ」って。

桜沢 仕上がりが違ったんですね。

MA そう、それでその場で受付にあったスクールに申し込んで、そこからはもうカットの研究に夢中になって。

桜沢 カットのどこが面白かったんですか?

MA 空中展開で、落ちた位置でデザインが完成されるところですね。そして、どうしたらヴィダルのデザインを日本人に似合わせることができるのか、ひたすら研究して、20代は1日に20時間カットの練習をしたことも。

桜沢 そうなんですね!? うわー、『こまどりの詩』には特にモデルなどはいないのですが、まさか日本の女性美容師さんで、ここまでヴィダル・サスーンに影響されている方がいるなんて思いもしませんでした!

桜沢エリカ、MISSESSENCEMAYUMI 撮影/矢島泰輔
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MA 私も、作品が私の人生にリンクしていることに驚きました。作中で、平成元年に椿さんが青山に「朝倉椿美容室」をオープンさせますが、私も平成元年に独立して、「MISS ESSENCE」を出店したんですよ。あと最初のほうで、藤子(とうこ)さんが、「朝倉椿美容室は基本エレガンスな店」と言っていましたよね?

桜沢 そうです。

MA 私も本当は前衛的なスタイルが得意で好きなんですが、仕事にあたっては、フェミニンでエレガンスを大事にしています。椿さんや藤子さんとは気が合いそう(笑)。

桜沢 うーん、MAYUMI先生は、あまりにも作品にピッタリで。これはもう、この対談とは別に取材させていただかないと(笑)!