しかし、最終的な結果は冒頭の通り。しかも、すでに彼はマッチングアプリを退会している状態でした。

 桃子さんが何をどう思うのかは本人の自由です。彼の目線が「自分の家に行くことに同意した=性交渉に同意した」だとしても、桃子さんの目線が「彼の家に行くことに同意したけれど、性交渉に同意していない」なら、必ずしも同意があったとは言えません。そして桃子さんがお酒を飲みすぎて、きちんとした意思疎通が難しい状況だったとはいえ、家の中で彼が「いい?」と投げかけたり、桃子さんが「うん」と返したりという確認作業はなかった模様。さらに桃子さんが抵抗しないから彼は大丈夫だと思い、性交渉を続けたのでしょうが、桃子さんが怖くて身動きが取れなかったのなら、「抵抗しない=同意があった」と結びつけるのは無理があります。

 しかし、桃子さんは酔いが回っていたにせよ自分の足で歩いていたので「彼の家について行き、部屋で二人きりだったけれど、そういうつもり(性交渉をするつもり)はなかった」という言い分を通すのは厳しいでしょう。

「職場や周りにも迷惑をかけたくないので、まだ警察には届け出をしていません。彼とのことはトラウマなので、これ以上、顔も見たくないし」と桃子さんは苦しい胸のうちを吐露します。上述の理由から、「無理やり彼の家に連れ込まれた」「力任せに押し倒された」というストーリーを仕立てて警察に相談しに行くのは難しそうです。

 曖昧な記憶を頼りに、彼の家を特定することができた桃子さんは彼に一通の手紙を送りました。その内容と、彼からの衝撃の返信とは──。

(後編へ続く)

※後編は9月22日21:30に公開します。


露木幸彦(つゆき・ゆきひこ)
1980年12月24日生まれ。國學院大學法学部卒。行政書士、ファイナンシャルプランナー。金融機関の融資担当時代は住宅ローンのトップセールス。男の離婚に特化して、行政書士事務所を開業。開業から6年間で有料相談件数7000件、公式サイト「離婚サポートnet」の会員数は6300人を突破し、業界で最大規模に成長させる。新聞やウェブメディアで執筆多数。著書に『男の離婚ケイカク クソ嫁からは逃げたもん勝ち なる早で! ! ! ! ! 慰謝料・親権・養育費・財産分与・不倫・調停』(主婦と生活社)など。
公式サイト http://www.tuyuki-office.jp/