子どもたちの心の支えとしての存在

 森田さんとベイリーが静岡県立こども病院にいたころのことだ。そこに、ゆづ君という、脳のがん患者の子がいた。泣くと呼吸が止まってしまうという日本でもほとんど症例のない珍しい症状のため、集中治療室を出ることのできない子だった。

 そこで、ベイリーが集中治療室に入り、ゆづ君と触れ合ったのだ。

「その後、残された時間を自宅で過ごすことになり、退院後も時間の許す限り、自宅を訪問しました。まったく動けないようになっても、ベイリーが行くとゆづ君はうれしくて起き上がったんですよ。残念ながらゆづ君は2歳10か月の短い生涯を終えました」と森田さんは声を詰まらせる。

ベイリーが引退するとき、ゆづ君の母親は「いまだにつらいけど、ベイリーと一緒の楽しそうな写真だけは唯一見ることができます」と、手紙でつづった
ベイリーが引退するとき、ゆづ君の母親は「いまだにつらいけど、ベイリーと一緒の楽しそうな写真だけは唯一見ることができます」と、手紙でつづった
【写真】ベイリーにぴったりと寄り添うゆづ君

 こんなに子どもたちに愛されるファシリティドッグだが、現在、静岡と神奈川、そして今年8月から東京都立小児総合医療センターの3か所で導入されているだけだ。

 普及が進まない理由はなんだろうか。

感染症などへの不安から理解が進まないと言われることもありますが、今はだいたい感染症の先生が『大丈夫』と言ってくれるんですね。犬と人間の感染症は違いますから。問題は、現実的に導入するとなると、金銭的なことが大きい。そこがネックなんですね」

 1頭のファシリティドッグとハンドラーを導入するとなると、年間900万円のランニングコストがかかる。

「毎年同じ金額がかかるのを覚悟してもらえるかどうか。ボランティアを1人入れるというのではなくて、“1職種”増やすというイメージなんです。だからいろんな体制も整えていかなければならないし、どうサポートしていくか、どのチームに入れていくのかとか、決めていかなければいけない。

 初年度だけなら無償提供はできるかもしれないけど、永遠にそういうわけにはいかない。病院全体としての動きにならないと、導入には結びつかないんですね」

 現在、『シャイン・オン!キッズ』では東京の病院に常勤するファシリティドッグの2年目の活動資金のためのクラウドファンディングを実施中である。森田さんは、アニー、そして引退したベイリーとともに暮らし、アニーと毎朝、出勤する。子どもたちから森田さんは、“アニーママ”と呼ばれる。

「アニーもまさにそう思っているでしょうね。ほかの犬に触れたりすると、グイッと邪魔しにくるんですよ。それも可愛いんだけど(笑)」


《INFORMATION》
ファシリティドッグの支援のためのクラウドファンディングはhttps://readyfor.jp/projects/facilitydog
詳細は『シャイン・オン!キッズ』HP http://sokids.org/ja/