「いじめはない」と教頭

 辰乃輔くんは'16年4月に中学校に入学、同時にサッカー部に入った。同級生や先輩から「ヘタくそ!」「ちゃんと取れよ!」と言われ、いじめのターゲットにされていく。悪口や仲間はずれもあり、学校に行き渋るようになる。

「6月にはカバンを踏まれ、シャーペンが折られ、水筒の中身がなくなっていました」

 佳奈さんは顧問に、いじめの内容を伝えた。「知りませんでした、気をつけます。すみません」と顧問は答えたという。しかし、いじめは続く。担任にも相談したが、クラスの加害者に対してストレートな物言いで指導したためか、担任が見えないところでのいじめが始まった。

 ノートをやりとりしていた担任は、いじめを知り「頑張れ、頑張れ」と書いたが、辰乃輔くんは「これ以上、どう頑張ればいいんですか?」と反発した。夏休みの宿題の作文にも、こう書いている。

《ぼくは、小5、6、今もいじめられて、かげで悪口やなかまはづれをされています。ぼくの存在って、存在なんてなくなればいいと思います》(原文ママ)

 夏休み明けの9月、何度か担任に手紙を書いた。

《ぼくは、サッカー部の友達からいじめられている。(具体名をあげ)2年の先ぱいたちに仲間はずれにされたり、むしされたり、かげ口を聞こえるようにする》(1日)

辰乃輔くん
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 さらに手紙を出し続ける。

《ぼくはこれからどうしたらいいのか分からない。ぼくは消えたい》(11日)

 18日、体育祭が行われたが、クラスの女子生徒に「しんちゃんのせいで優勝できなかった」と言われた。女子生徒の両親は発言を否定したが翌日、辰乃輔くんは自室で首をつり最初の自殺を試みる。

「“なんでこんなに苦しまなければいけないの?”と言っていました」(佳奈さん)

 学校に連絡すると校長が訪ねてきた。SOSに気がつかなかったのかと聞くと、校長は「あれ(手紙)がSOSですか?」と言ったという。

 辰乃輔くんは10月19日にも手紙を書き、担任に送った。

《学校は、いじめがないって言ってるけど、いじめられていたぼくはなんだろう》

 26日の夜、また自室で首をつろうとした。このとき、学校あての手紙を書いている。

《ぼくは、学校のじゃまものなんだ。いじめられたぼくがわるい。学校の先生たちはなにもしてくれない》

 学校側は11月、ようやく、いじめの有無に関するアンケート調査の結果を佳奈さんに伝える。教頭は電話で「いじめはない」と述べた。

《死んでぼくがいじめられた事を分(か)ってもらいます》(25日)