もしも若き宗達がイタリアで…

「宗達がルネサンス期の画家の作品に触れるという話のヒントは以前、対談した細見美術館の細見館長の言葉です。細見さんが初めてバチカンに行かれたときに、ミケランジェロの『天地創造』を見て、宗達を思い出したとおっしゃったんです。実は私も、同じ印象を受けていました

 確かに『天地創造』で描かれるキリストは筋骨隆々。宗達が描いた『風神雷神図』の風神雷神も下っ腹はたるんでいるものの、やはり筋骨隆々だ。

 もしも、若き宗達がイタリアで、『天地創造』を見て、刺激を受けていたとしたら……。作家の想像力はますます広がり、私たちに夢あふれる物語を紡いでくれた。夢あふれるといえば物語後半で登場するカラヴァッジオにも驚かされる。

「ルネサンス期に生きていた西洋の画家と宗達が接触していれば面白いと、創作当初から考えていました。

 カラヴァッジオは、ルネサンス後のバロック幕開け時期の画家。天正遣欧少年使節がミラノにいた時期に、ちょうどミラノにいたことがあるとわかって、役者はそろった! と思いました」

 歴史上の事実に虚構を加えて物語を作り上げる。原田さんはまさに映画監督のごとく、宗達とその周りの登場人物を動かしていった。

まっすぐで純粋なまま交じり合う少年たちの心

 宗達の目を借りて、ルネサンス期の優れた絵画を眺められることや、俵屋宗達はきっとこんなふうにまっすぐで、自由な心を持ったマイペースな少年だったのだろうとイメージすることも、本書の楽しみのひとつだが、読み進めていくうちに、少年たちの成長と友情にも胸が熱くなる。

「汚れないまっすぐな信仰心を持ってローマに行ったキリシタンの少年たち。そこに少年絵師の宗達の純粋な創作への情熱が加わることで、ひとりひとりが純化していく様子を描けるといいなと思いました」

 原田さんの思いそのままに、苦しい航海を経て、初めて出会う異国の人々との触れ合いの中で、少年たちは逞しく成長していく。