肥満の人は“第6の味覚”を持っている

 そして、出汁がもたらすもうひとつの効果というのが、

“味覚の正常化”です。脳に作用して食欲をコントロールするのと同時に、味覚を司る味蕾に作用することで自然と脂っこい、甘ったるいものが食べられなくなるのです

 “食べられなくなる”とは? 工藤先生は、肥満の人は第6の味覚と呼ばれる、濃い味や高カロリー食を感知する「脂肪味」の感受性が低下している人が多いと話す。

この脂肪味がマヒしてしまうと、普通は“脂っこくてもう食べられない”とやめるところを、閾値が上がり感受性が落ちていることから際限なく脂をとってしまいます。これを“デブ味覚”と呼んでいますが、このマヒした味覚を出汁で改善できるのです

 出汁を1日1杯飲んで3~4日、当初は感じられなかったうまみがわかるようになり、敏感になった味覚は次第に濃い味や脂っこいもの、ソースやマヨネーズまでも受け付けなくなる。

 そして続けること2週間。

味覚とは後天的に食べるものに影響されて形成されますが、その味覚を感じる器官である味蕾が生まれ変わるのに要する期間が2週間です。デブ味覚の人が出汁を飲み続ければ、脂肪味を敬遠する“やせ味覚”に2週間で変わることができるのです。

 すると食べる量が減り、脂や糖も抑えられておのずと食事制限になり、うまみによって心も満たされるので食への依存からも脱することができるでしょう。仮に食事量が変わらなくとも、低カロリー食を好むようになります」

「やせる出汁を飲むだけでやせる」のメカニズムは、「食欲の制御」「味覚の調整」だった。また、このダイエットの便利なところは、例えば忘年会や新年会が続いたとしても、また出汁を飲めば2週間でリセットできることだ。

「私は、寒いときは水筒に温かい出汁を入れて持ち歩き、毎食前や小腹がすいたときに飲んでいます。就寝前に飲めば気持ちが落ち着くのでよく眠れると思いますよ。また粉をおにぎりにまぶしたり、お味噌汁に入れても効果があります。要は脂や糖のかわりに出汁粉を使うようにすれば、日常に取り入れやすいですね。

 材料は自然の素材ですし、刻み昆布も塩分抜きなので患者さんやお子さんの食育にもすすめています。お菓子を食べすぎるお子さんが出汁を飲んでやめられたなど、ダイエットだけでなく万人が健康になれる出汁だと思います」

 これで年末年始も怖くない。次ページの『やせる出汁』の作り方を参考に、心と身体、味覚を整えよう!