炎上で必ず出てくる『なりすまし』

 一方で特定班たちの人違いにより被害をこうむった人たちもいる。昨年、ワイドショーをにぎわせた“あおり運転事件”。傷害容疑で逮捕された宮崎文夫被告の横でガラケーで録画する同乗者の女性は、特定班が誤った情報を拡散した最悪なケース。

「これは特定班が人違いでまったく関係のない女性をガラケー女として拡散してしまい、彼女の会社やフェイスブックには嫌がらせの電話やコメントが殺到しました。精神的苦痛をこうむった女性が、特定班の誤った情報を拡散したとして、愛知県豊田市議を名誉棄損で訴える事態に発展しました」(渋井さん)

 また、炎上状態になると必ず出てくるのが『なりすまし』の存在だと渋井さん。

「唐田さんの不倫騒動ですぐに出てきたのが唐田えりかの偽インスタグラムです。縦読みで《東出大好き》となるんですけど、よくよく見ると名前がカラテエリカになっているし、投稿文の最後も《きんたま大きなきんたま》などと書かれていて、すぐに偽物とわかりそうなんですが、この投稿を信じて批判している人も多くいました」

 もともとのファンがその探偵力を発揮する場合もある。

「アイドルの彼女の匂わせを暴いたケースなどはほとんどファンですね。彼女たちは意中のアイドルと共演した人を徹底的に調べます。そこで匂わせ行為に気づくんです。これはファンならではの探偵力でしょう」(渋井さん)

 ファンならば執念を持って追跡することも不思議ではないが、破局に追い込むまではしていないようだ。

今、最もファンから警戒されているのは女優の平祐奈とキンプリ平野紫耀の組み合わせです。例えば平野が『かぐや様は告らせたい』という映画に主演しているときに平がインスタライブで“かぐや様”と脈略もなく発言。平野のものと思われるオープンカーに乗ってインスタストーリーをあげる。おそろいの眼鏡をかけるなど、これまでもお互いに匂わせが多く、歓迎されていないカップルですね」(芸能記者)

バカッター投稿は人生の終わり!?

 特定班に追われるのは一般人も同様だと渋井さんは警鐘を鳴らす。

いちばん気をつけなくてはいけないのは一般人でツイッターに悪ふざけ動画を投稿する通称“バカッター”たち。だいたい学生でまだモラルもわからないうちからSNSに気軽に自分の個人情報を投稿しています。特定班は彼らが身内だけで撮っていたおふざけ画像をスクショ(スクリーンショット)して、拡散します。そして学校や就職先にクレームの電話を入れるまでがセットです。実際にこれで内定取り消しになった人も大学を退学させられた学生もいます

 特定班に狙われたら最後。人生を棒に振る危険もあるのだ。

◇特定班が暴いた主な出来事

■住谷杏奈ロールパン偽造疑惑(’07年)
ブログに手作りのロールパンとしてアップしたものが市販のロールパンだったことが画像検索により特定された。

■五輪エンブレムパクリ疑惑(’15年)
デザイナーの佐野研二郎氏がデザインした東京五輪のエンブレムに盗用疑惑があがり白紙撤回に追い込まれた。ほかにも佐野氏がこれまで手がけたデザインのパクリ疑惑が検証されるサイトが次々に出現した。

■仙台いじめ母子心中事件加害者特定(’18年)
仙台でいじめを受けたとする小学2年の少女とその母親が心中するという痛ましい事件が起き、特定班は加害者を特定。今でも加害者とされる人物の実名がネットに出ている。

■女子中学生暴行動画拡散事件(’19年)
葛飾区の中学生の女子を集団で取り囲み暴行する動画がツイッターにアップされ、すぐに加害少年の名前、中学などが特定され中学校の副校長が認めるまで追い込んだ。

教えてくれたのは…
ジャーナリスト 渋井哲也さん◎長野日報を経てフリー。自殺やインターネットに詳しい。主な著書に『ルポ平成ネット犯罪』などがある