ヒットはアニメが起爆剤

 実際に、こんなシーンがある。

 炭治郎の兄弟子や先輩を何人も殺した鬼がいた。彼は鬼になったことで、いつも手を引いてくれていた仲のよい兄を食い殺してしまった過去を持っていた。鬼になり記憶をなくし、“兄”という概念すら忘れてしまっている。そんな鬼を倒した後、炭治郎は、

「神様どうか、この人が今度生まれてくるときは、鬼になんてなりませんように」

 兄と同じように、手を握って、このように語りかけるのだ。

『鬼滅』のコミックスは、発売当初から右肩上がりに部数を伸ばしていたが、あるときを境に、さらにその伸びを加速させている。

「去年の4月にアニメが始まった段階では、350万部程度でした。その後、4月に500万部、7月に800万部、9月に1200万部と、何倍にも増えていった。『鬼滅』のヒットは、アニメが起爆剤になっていることは間違いないと思います」

 そう話すのは、国内外のアニメに詳しい映画ライターの杉本穂高さん。

「アニメは『刀剣乱舞』も担当した『ufotable』という制作会社が作っているのですが、作品の質がとても高いスタジオということで、アニメファンの間ではすごく信頼が厚い。1本1本の作品を本当に大事に作る会社です。『鬼滅』では、監督がOKを出したパートを、指示されたわけではないのに、担当のスタッフが、それをさらにブラッシュアップしてよりよくしたということがけっこうあったらしいです。また社風として原作モノを作るときは、その原作を好きなスタッフで作るという考え方で、熱意のある人が作っていることも特徴です」(杉本さん)

 '20年は映画の公開も控えている。この人気は、今年中はかげりそうにない!?