吉田潮コラム 歯がゆい展開&男女の精神的な成熟差象徴

 ♪テケテーンとか♪ジャカジャーンと、音が鳴るたびにすれ違ったり行き違ったりで、歯がゆい展開になるドラマ、それが「東京ラブストーリー」。家電や公衆電話、そして留守電が頼りの時代、多少の遅刻や勘違いにもみんな寛容だったよね。

 記憶をたどると、前半はリカの独特の天真爛漫さが鼻についた。帰国子女ってもう少し知的ではなかろうかと思ったりもして。ただし、空気は読まないが、「リカは一途なだけ」と思った記憶もある。好意も行為も自分が主導、決して人のせいにしない。おまけに尻ぬぐいも自分でする女、気持ちいいよね。

 逆に、いつも人任せで男頼み、どっちつかずで、完治と三上を転がす、さとみのほうが断然タチが悪い。実際、後半では鍋だの、おでんだのとメシで完治を釣って、リカとの関係をことごとく邪魔したので、世間的にも“アンチさとみ派”が急増した記憶が。振り回されてほだされる完治も完治だよ! と叱りたくもなるほど、初恋を美化する男の典型だった(女は初恋を唾棄するものだ)。

 最後の最後までぐだぐだして煮え切らなかった完治、再会してもほだされず、過去の恋に見事にケリをつけたリカ。男女の精神的な成熟の差を見せてくれたドラマでもあった。

 そして、今改めて見て思うことがある。劇中でモノ言う女・リカが厄介な存在として描かれていた。上司と不倫していたことで「関わらないほうがいい」「誰とでも寝る女」と同僚(中山秀征)に陰口叩かれて。

 仕事ができる女の足をひっぱる男が必ずいるんだよね。しかも元不倫相手の上司も、完治に対して妙なマウンティングしやがる。つくづく、女の出世を阻むのは男の嫉妬なんだよなぁと痛感した次第。約30年の時を経ると、見える風景も変わるので、ぜひ再度見てほしい。

 その後の物語を同じキャスト・同じ脚本家の「オリジナル」で作ればいいのにと思ってしまった。無理ですかねぇ?(コラムニスト)