正規雇用でも安泰ではない

 パートやアルバイトにとどまらず、正社員にもしわ寄せが。

 入社2年目で解雇されたという池上葉子さん(仮名、20代)は、

「私は仕事が好きだったので、生きる目標を失いました」

 とがっかり肩を落とす。都内の人材関連の広告代理店が職場だったが、

「3月からテレワークが始まり、4月から休業で、4月末に、5月からもこの状態が継続するという連絡が来ました」

 ところが5月1日、国際的に労働者の祭典の日であるメーデーに、

「メールで解雇通知を受け取りました。ほとんどの社員が一斉に解雇されました」

 と池上さん。

雇用者は従業員の解雇予告を解雇の30日前にする必要があり、30日未満なら「平均賃金×日数分」の解雇予告手当を支払う
雇用者は従業員の解雇予告を解雇の30日前にする必要があり、30日未満なら「平均賃金×日数分」の解雇予告手当を支払う
【一覧表】家賃・生活費に困ったときの公的支援

「売り上げが当初の20%くらいになってしまって、会社の存続のためには人材を削るしかないという判断になったとのことでした。突然だったので焦りました。

 貯蓄が80万円くらいありますが、学生の妹と住んでいて、節約しても4か月くらいしかもたないと思います」

 新卒で入ったので、退職金はないという。

「失業保険の手続きはしました。今度、『住居確保給付金』(表参照)の申請に行きます。妹はバイトをしていましたが、この春に仕事がなくなってしまいました。最近は、食事の回数を減らしたりして節約しています」(池上さん)

 現在、次の仕事を探しているが、再就職もままならない状態が続く。

「実家の家族には、解雇になったことは言っていません。心配かけたくないので、今もずっとテレワークだと伝えています。転職した後に報告するつもりです。

 次は、どんな状況でもつぶれない安定した会社で働きたいですね」

 未知のウイルスが原因とはいえ、就職2年目で直面するにはむごい現実だ。

 池上さんは、

「『緊急小口資金』(表参照)は、返さなければいけないお金なので、あまり借りたくない気持ちがあります」

 と躊躇(ちゅうちょ)しているが、あらゆる公的支援を利用してでも、コロナ禍を生き延びることが先決だ。