下手=捕まりやすいから小学生で増加?

 万引きの統計で、小学生や高齢者の比率が高くなるのは、手口が安易で、捕まりやすいことに起因している。

 万引きの研究をしている香川大学の大久保智生准教授(犯罪心理学)は、「小学生の場合は単独ですることが多く、犯行が上手ではないのです。一方で、中高生の場合、複数で行い、犯行は上手。だからこそ、認知件数の中で、小学生の比率が高まっている可能性があります」と指摘。

20歳未満の万引きの内訳 出典:警視庁(令和元年)、数字は東京都内
20歳未満の万引きの内訳 出典:警視庁(令和元年)、数字は東京都内
【統計グラフ】小学生が万引きする品物、その内訳

 原則として、万引きが起きると、店側はすべて通報することになっている。そんな中で万引きが上手ではない小学生は、店側が把握しやすく、通報件数が上がりやすい。

 ただ、店側が万引きを通報しないケースも多く、警察によっては、万引きへの対応は嫌がることもある。

 万引き対策として、店舗側はGメンなどの保安員を雇用するが、費用対効果の問題もあり、毎日、警備をすることはない。万引きの被害額と、保安員の人件費の兼ね合いもある。大久保准教授が言う。

「香川県では店舗がまじめに通報し、警察もきちんと対応していたため、’09年まで、人口1000人あたりの件数で全国ワースト1でした。現在は、さまざまな対策が奏功してワースト1を脱却していますが、都会ほど万引きが多くないため店も警察も対応しやすい。かたや大都市圏では、すべて通報するように言いながらも、万引きが多いと店も警察も対応が現実的に難しい。地域によっては、謝罪すれば許し、警察に届けないというところもあります」

万引き=「流行遅れ」で中高生が減った?

 児童相談所にも、万引きに関連した相談が寄せられることがある。児相の勤務経験がある、西南学院大学の安部計彦教授(児童福祉学)は、「肌感覚の数字ですが、小学生の3分の1は、500円以下のおもちゃやお菓子などを万引きしたことがあるのではないでしょうか。その意味で、どこの子どもでも、万引きする可能性があります」と話す。

 ただ、20歳未満の万引きで小学生の比率が高まったということは、反対に、中高生の割合が低下したともいえる。この点について、伊東さんも大久保准教授も「万引きが中高生の間で流行ではなくなったのではないか」と口をそろえる。統計上も明らかだ。

 安部教授はこうも述べる。

「少年非行全体の数が少なくなっています。中高生はゲームに熱中している。以前、家や学校に居場所がない子どもが非行に走りましたが、今は、携帯やスマホ、ゲーム機の中に居場所ができました。以前は、アダルト系雑誌を万引きすることもありましたが、今では(アダルト系の写真も動画も)スマホで見ることができます。環境の変化による影響が言えるでしょう」