わが子の万引きに親はどう対応する?

 親は、子ども万引きをどれだけ知っているのだろうか。

 ’18年の学校基本調査報告書によると、都内の小学生60万9512人のうち、実際に補導された小学生は489人で全体の0・08%。一方、前出の万引き調査では、「子ども万引きしたことがある」と回答したのは小学生の保護者層で5%、一般市民層では3%。補導されなくても、子ども万引きを親は把握していることになる。

 安部教授は「小学生は一定数、万引きします。親自身が“自分の育て方が悪かった”などと思う必要はありません」と話す。万引きは、子どもの成長過程で誰でも起きるひとつの問題行動であり、特別なことではないという。

 では、親が子ども万引きを知ったときに、どんな対応をすればいいのか。

「小学生の場合、遊び心か、我慢できないという場合がほとんどです。反抗期や流行のようなものであり、深刻に考えることはないですが、きちんと対応しましょう。お店に連れていき謝らせる。決して万引きを許さないことです」

 前出・石井さんも中学受験後、初めて親にバレるという出来事があった。フィギュアを盗んだときに店のスタッフに見つかり、万引きが発覚したのだ。親は店の人に謝罪した。

「親が謝っている姿を見て、申し訳ない、してはいけないことなんだ、と思いました。その後、盗癖はなくなりました」(石井さん)

 一般市民対象の万引き調査では、年齢が下がるほど「万引きを通報しなくてもよい」とする傾向があった。高齢者よりも小学生には、やや甘い。

「小学生は万引きの重大さをわかっていないため、しつけが重要です。中高生は悪いとわかってやっていたりしますが、小学生には“万引き犯罪”と教える必要があります。大切なのは、学校や家庭での対処。なかには店側に逆ギレしたり、クレームを入れたりする親もいますが、こうした場合、万引きを繰り返してしまいます」(大久保准教授)

 これには、伊東さんも同じ意見だ。

「親の謝る姿、親が悲しむ姿を見せるのです。すると、子どもは泣いて反省したりします。子どもを殴るのはダメです。あれは親の自己満足。そうなると、子どもは言い聞かせても納得しません」

 万引きを繰り返してしまうケースはどうだろうか。安部教授は、こうアドバイスする。

「理由も聞かないで叱るだけでは解決しません。親の接し方にも工夫が必要です。まずは身近な専門家、学校の先生に相談しましょう」

 万引きをめぐっては、警察も把握できていないケースが多い。そこには、寂しさや貧困など、子どものSOSが見え隠れすることもある。単なる問題行動と切り捨てるのではなく、社会が手立てを考えなければならない。


取材・文/渋井哲也 フリーライター。長野日報を経て現職。自殺やいじめ、自傷など若者の生きづらさを中心に執筆。東日本大震災の被災地でも取材を重ねている。『学校が子どもを殺すとき』(論創社)ほか著書多数