山口百恵さんがこれまでに発表した楽曲のストリーミング配信が始まり、往年のファンから若い世代までもが、ふたたび彼女に夢中に―。時代を越えて愛され続ける歌姫の軌跡を、週刊女性取材の写真とともにプレーバック!

 5月29日、山口百恵さんがこれまでに発表した600曲以上の楽曲のサブスクリプション配信が、ついに“解禁”。往年のファンをはじめ、若者世代でも大きな話題となり、SNSでは喜びの声があがっている。

 サブスクリプション配信とは、定額の月額料金を払うことで、音楽が聴き放題になるサービスのこと。配信元はApple MusicやSpotifyなど各社さまざまで、スマートフォンやパソコンでダウンロードすることによって、利用することができる。

 もともと百恵さんの“サブスク解禁”を待ち望む声は多かった。とはいえ引退から40年たった今でも、世代を越えて語り継がれる彼女の魅力とはいったい何なのか? 『としごろ』や『ひと夏の経験』など、多くのヒット曲を作曲した音楽プロデューサーの都倉俊一さんは、次のように話す。

東京・帝国劇場で『山口百恵リサイタル』を開催。この数日後、恋人宣言を行う('79年10月) 撮影/週刊女性写真班

「山口百恵の持って生まれた個性というのは、ほかの人には見られない稀有(けう)なものだと思います。僕らがあらかじめ用意した、キラキラしたお姫様のようなドレスやニコニコさせて撮るような画というのは彼女には全く似合わなかった。彼女自身も気づいていなかったかもしれないような、自分の決めたことを一貫する姿勢やブレない芯の強さというのが世界観になっていて、それがいちばんの魅力でした

アイドルから
アーティストへと脱皮

 また、尚美学園大学副学長で、音楽評論家の富澤一誠さんいわく、“歌謡ロック”という新しいジャンルを築き上げた歌手であるため、その栄光が語り継がれているという。

「デビュー当時、ともに“花の中3トリオ”と呼ばれていた森昌子さん、桜田淳子さんに比べて、百恵さんは地味な存在でした。その印象がガラッと変わったのが'76年に発表された『横須賀ストーリー』だと思います。歌謡曲とロックを合わせた“歌謡ロック”を歌い始めたことで、アイドルからアーティストへと脱皮しました
 
 サブスク解禁後、再生回数1位を誇るのは言わずと知れた'78年の名曲『プレイバック Part2』。当時、革新的だった“強い女性”を歌った歌詞は、同性の支持を得るきっかけにもなった。

「当時のアイドルは、自分の意思を持たない可愛らしいお人形のような存在でした。そんななか、'70年代後半は、自分の意思を持つ女性こそが美しいのではないか、という認識が広がっていく時代でもあったんです。その先駆者となったのが、百恵さんだったと思います。

『プレイバック Part2』や『絶体絶命』のような歌詞でもわかるように、かなり強気な女性の歌を歌っています。“女性もこうあるべきだ”というマニフェスト的な歌を歌ったという点が、男性だけではなく同性から支持を集めた理由だと思いますね」(富澤さん)

引退会見では「三浦友和の女房として、一生懸命務めます」と語った('80年10月15日) 撮影/週刊女性写真班

 そして、なにより印象強く残っているのが、'80年の引退表明。彼女が“伝説”となった瞬間だ。

「活躍し続ける俳優さんやアーティストは、年々変化し続けます。若いころより成長していくことで、人々の心に残り続ける人もいるでしょう。しかし、若くして表舞台から去った人物というのは、その一時が思い出として冷凍保存状態で残るんですね。

 彼女は何の未練もなく芸能界を去って新しい人生を選んでいった“あの瞬間”というのが、人々の心に色濃く残り続けている。若さや美しさだけではなく、生きざまや世界観までをも印象強く残して去ったことが、彼女が伝説としてあり続ける理由だと思います」(都倉さん)
 
 その伝説は、“サブスク解禁”というきっかけを経て、現代の若者にも広く知られることに。

「現代の若い世代にとって、CDを買うことは非常にハードルが高い。サブスクリプションで聴いてみたら、案外よかったという“きっかけ”が重要なんです。百恵さんの歌が配信されるようになって、いまを生きる若者たちにもささる歌として好評を得ることで、さらに今後へと語り継がれていくことになると思いますね」(富澤さん)