ミュージシャンは、ハリウッドで一流とされる面々が集められた。右がスティーブ
ミュージシャンは、ハリウッドで一流とされる面々が集められた。右がスティーブ
【写真】19歳から始めた小児病棟でのコンサートの様子

人生を賭けたメジャーデビュー

 しかしエージェントはこうも言った。

「スティーブは、すごく厳しいし、好き嫌いがはっきりしている。だから、どんなに僕がゴリ押ししてもダメだったらダメ。自分のキャリアに泥を塗るようなことはしない人だから、そこだけは覚悟しておいてください」

 堀澤はスティーブの自宅に呼ばれた。怖い人だと聞かされ緊張していたが、実際に会うと気さくな人だった。

「まるで関西のおっちゃん(笑)。髪の毛が爆発していて、映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』のドク博士みたいでした。でも音楽的に素晴らしい人だとすぐにわかった」

 結局、堀澤はスティーブにプロデュースを依頼することに決める。

 アルバム制作が決定し、'13年、スティーブはリーランド・スカラー、ヴィニー・カリウタなどの世界屈指のミュージシャン、ハリウッドのフルオーケストラを招集し、レコーディングが行われた。

 オーケストラの出来は素晴らしく、スティーブは子どものように泣き、堀澤も泣いた。

 アルバムタイトルにもなった『KINDRED SPIRITS〜かけがえのないもの』という曲は、ある女性歌手のためにスティーブが作った曲だった。しかし、その歌手が亡くなってしまったために、歌える歌手を探していたのだ。

「歯を食いしばって、人生本気で生きていたら必ず叶う。レコーディングの日が誕生日に重なったのは偶然でしたが、自分への最高の贈り物でした。必死にやってきて騙されたことも、全部に意味があった。これでやっと報われました」

3度目の渡米で夢をつかみ、メジャーデビュー作のレコーディングを行った
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 完成したアルバムは、「近年稀に見る世界クラスの作品」と評価を受け、'14年6月25日にメジャーリリースとなった。

 堀澤は、40歳にしてついに念願のメジャーデビューを果たす。

 堀澤と親しい米在住の作曲家、松本晃彦さんは言う。

「僕は長期的に計画を立ててアメリカに渡ったのに、堀澤さんは未知の領域でも突き進んで実現させるバイタリティーのある人。それも飄々と。いろんな経験を糧にして歌の円熟味につなげているのがすごい。ますます進化していくタイプだと思いますね」