なぜ批判されるのか……

 発生当初から、とも子さんは、通常の被害者とは異なる扱いを受けてきた。

《畠山鈴香似》《疑惑の人物》

 SNS上では、秋田県で娘を殺害した犯人と、とも子さんが同列視されたり、とも子さん自身が行方不明事件の犯人だと疑われる、とんでもない書き込みまでされていた。

 とも子さんは今でも、インスタやツイッターに投稿すると、批判のコメントが一定数寄せられる。それでも投稿し続けるのは、美咲ちゃんのためだ。

「とにかく風化はさせたくない。どんな些細なことでもいいから情報が欲しい。その一心でSNSを続けています」

キャンプ当日にはいていたとも子さんのシューズ。新品だったこの靴は穴があいてボロボロになっていた。必死で美咲ちゃんを捜し回った痕跡がわかるが、ネット上では「テントでボランティアに偉そうに指示して動かない母親」とデマが流されている
キャンプ当日にはいていたとも子さんのシューズ。新品だったこの靴は穴があいてボロボロになっていた。必死で美咲ちゃんを捜し回った痕跡がわかるが、ネット上では「テントでボランティアに偉そうに指示して動かない母親」とデマが流されている
【写真】とも子さんのSNSに届く「早く死ね!死刑」「殺しに行くからな」などのメッセージ

 疑惑の発端は、行方不明直後のインスタの更新だった。

《ご存じの方もいるかもしれませんが、うちの次女が行方不明になっています。皆さん、無事を祈って頂けると有難いです。》

 とも子さんが振り返る。

「美咲の実名が報道されるまで数日ありましたが、私が経営する店のお客様が、インスタの投稿を心配する気持ちから拡散してくれたんです。ところが、過去の写真の投稿も残ったままだったので、美咲の写真が公開前に広まってしまいました。店のお客様だから直接やめてほしいとも言えなくて……」

 とも子さんは、拡散を止めたいという思いから再度、投稿した。そこには捜索ボランティアが連れて来た白馬の写真を掲載し、こんな文章を添えた。

《みなさんの気持ち、美咲にも私にも十分届いています。私のことは心配しないでください。─中略─。動物が大好きな美咲に見つかったら、たくさんの人と動物達も美咲の為に頑張ってくれたんだよと話してあげたいので、不謹慎かもしれませんが写真撮りました》(原文ママ)

とも子さんのSNSにはこのようなメッセージが頻繁に届いている
とも子さんのSNSにはこのようなメッセージが頻繁に届いている

 しかし、とも子さんの意図が伝わらずにネットユーザーの誤解を招き、炎上した。

《よくこんな時にインスタに投稿できるな》

《親の自己責任だろうが!》

 ハッシュタグに店の名前を入れていたことも批判につながった。

 とも子さんが釈明する。

「こんなときに店の宣伝かよって言われましたが、そうではありません。店の名前で検索する知人やお客様に伝えたかっただけです」

 拡散は止まることがなく、店の名前、住所、電話番号までもがネット上にさらされた。

「電話は携帯に転送されるので、捜している最初の数日間は深夜も電話が鳴りやまず、大変でした。無言電話もありますし、出たら『お前はネットなんかしやがって、ふざけんじゃねえよ!』といきなり怒鳴りつけられ、説教されたりもしました」

 無言電話は今でもかかってくる。とも子さんは、娘を捜し続けている被害者だ。

 はたして、ここまでの誹謗中傷を受けなければならないほど、過ちを犯してしまったのだろうか。

「元をたどれば、あのとき、私が美咲についていかなかったから、こんな事態に至り、世間からも批判を受けている。みなさんに迷惑をかけてしまった原因は私にあるので……」

 とも子さんは自分を責め続けている──。実はSNSによる被害は、これだけにとどまらなかった。

(次号・後編に続く)


取材・文/水谷竹秀 ノンフィクションライター。1975年生まれ。上智大学外国語学部卒業。カメラマンや新聞記者を経てフリーに。2011年『日本を捨てた男たち フィリピンに生きる「困窮邦人」』で第9回開高健ノンフィクション賞受賞。近著に『だから、居場所が欲しかった。:バンコク、コールセンターで働く日本人』(集英社)。