なぜ空き家を管理するようになったのか

 前出の近所の男性は、

「犬は8年前ぐらいから増え始め、特にここ5~6年はひどかった」と振り返る。

「室内には虫が湧き、ハエや蚊、ゴキブリ、ネズミがチョロチョロ動き回っとった。犬の糞尿がエサになるのか、小指の太さの大ムカデや体長10センチ以上のゴキブリもおった。糞を食べようと野良猫や小鳥も近寄ってくる。犬たちは、毎日エサを食べられへんから、窓を這っているシロアリをペロペロ舐めとった」(同・男性)

 犬同士でケンカしたのか足が1本ない子がいたり、共食いしたり。敷地内の花壇に掘られた穴には、生まれたばかりの子犬が放置されていたことも……。

階段には居場所のない犬が並び、床に置かれた大きなタライには汚い水が(読者提供)
階段には居場所のない犬が並び、床に置かれた大きなタライには汚い水が(読者提供)
【画像】田中容疑者が管理していた空き家は現在、警察の手によって……

「かわいそうで見るのもキツかった」(同)

 あるときは室内から逃げ出した5、6匹の犬が群れて近所を走り回り、2階の窓から飛び出した犬は屋根の上をポンポン飛び回った。

 別の女性住民は、

「近所の子どもが噛まれるのではないかと心配だった。しつけられていないせいか、追い払おうとしても言うことを聞かない。鳴き声もすごくて、夜中の2~3時ごろ“ワワワワン!”と吠え始め、朝まで続くこともあり、つらかった」

 と、胸中を明かす。

 長年、問題視されてきたが、空き家の所有者は田中容疑者ではないため、「犬のエサやりを頼まれているだけ」などと言い逃れされてきたという。

 なぜ、空き家を管理するようになったのか─。

 所有者一家を知る住民が耳打ちする。

「あの家では両親と精神疾患を持つ娘A子さんの3人が暮らしていたが、母親が入院し、父親も体調を崩した。田中容疑者は、父親と同じ会社の部下という触れ込みで“A子の面倒を頼まれている”と家に入り込むようになった。両親が亡くなったあともそれを続け、A子さんが5~6年前に入院してからは“A子から飼い犬の面倒を頼まれている”に変わった」

 この住民らによると、2人で同居していたころは、田中容疑者の怒声が外まで響いたり、A子さんの身体に殴られたようなアザがあったことも。