LINEはブロックされ、音信不通に

 この日を境に彼からの返事が届くことはありませんでした。愛里さんがLINEでいくらメッセージを送っても既読にならないのです。彼が愛里さんをブロックしたのは明らかでした。

「結婚してくれる。ローンを組んでくれる。実家を建て直してくれるって言うから、彼の好きにしたのに……これじゃ、詐欺じゃないですか?」

 筆者に対して愛里さんは語気を強めます。当時、彼女はまだブロックされたという現実を受け入れられず、彼をありったけ罵倒すべく、追加でメッセージを送りつけていたのです。

《あんたは外面だけいいんだから! まともな人間だって周りから思われているんでしょ!? でも実際には全く逆!! 非常識で非情で卑劣極まりない人間だわ! 私に対して何をしたのかわかっているの?》

《あんたのご両親にすべて話すわ! だって、あんたは都合のいいことしか伝えていないでしょ!? 最初から身体目当て近づいて、『一緒になりたい』と甘い言葉をささやいて信じ込ませて、ホテルに連れ込んだのよ。やることをやったらポイ捨てするような詐欺師に自分の息子を育てた覚えはないはず! ご両親はこの上なく悲しむでしょうね!》

《もう頭に来た! 警察に駆け込むから。もし私への仕打ちの一部始終を知れば、もう大変なことになるでしょうね! だって、あんたはレイプ魔なんだから!!》

 愛里さんがどれだけ怒り、憎しみ、恨みをメッセージに込めたところでなしのつぶて。彼がブロックを解除しない限り、彼の目に触れることはありませんが、このようなメッセージが届くだろうことを予期しているので、彼はずっとブロックしたままでしょう。

愛里さんは彼にとって“いいカモ”だった

「彼のことですごく傷つきました。私はショックのあまり、ご飯が食べられなくなり、夜も眠れなくなりました」

 愛里さんは苦しい胸の内を明かしますが、せめて彼の住所だけでもわかっていれば、展開は違っていたはず。例えば、直接訪問したり、手紙を送ったり、裁判所に調停を申し立てたりすることが可能なので、彼の気持ちを聞き出すことができたかもしれません。

 もちろん、彼が転居すれば、転居先を調べようがありませんが、LINEのブロックと違い、引っ越しにはそれ相応の時間、費用、労力がかかります。決してワンクリックで済むわけではありません。自宅ではなくホテルを指定したのは彼のほうが一枚上手だったのでしょう。結婚だけでなく、住宅ローンの申し込み、実家の新築、そして両親との同居まで要求してきた愛里さんは彼にとって“いいカモ”。なぜなら、愛里さんの要求のハードルが高ければ高いほど彼は「愛されている」「好かれている」「信じられている」と思うからです。

 残念ながら、愛里さんには彼の言葉が嘘か本当かを判断する能力に欠けていました。筆者は「打つ手はありませんが、婚活はこれが最後ではありません。次回は気をつけてください」と諭し、愛里さんはLINE電話を切ったのです。