自分を奮い立たせるためのセリフ

──『SHIROBAKO』の印象的なセリフで「万策尽きた!」というのがありますが、みなさんが万策尽きた、と思ったときは、どうされますか?

佐倉:万策尽きたら……。私、世界で一番信用しているのは“時間”なんですけど、時間がたつのを待つ、ですかね。時間だけなんで、絶対信用できるのは。

木村:闇を感じる(笑)。

佐倉:嫌なことを考えないようにしようって時点で、考えてるんですよ。それを本当に解決してくれたり、いい方向に持っていってくれるのは時間だけです(笑)。その間、自分にできることをやって……善処するみたいな感じで、時間のことをずっと考えてます。3日たった、5日たった、1週間たった、という感じですね。

木村:私は「万策尽きる」っていう経験がそんなになくて、1個だけ思い出したのが、中学生ぐらいのときに『ドラクエ7』をやっていたんですけど、冒険の書をラスボス直前で間違って消しちゃって。そのときは頭が真っ白になってお風呂に入って、もう1回電源をつけるっての繰り返しやってましたね(笑)。だから、お風呂に入って頭を冷やす、ですかね。

佐倉:温まってますけど!(笑)。

木村:(笑)。とにかく現実逃避ですかね、私は。立ち向かえないです。

田村:僕はない! 万策尽きたことがないです。あれは、心の中の声で言うことで自分を奮い立たせるためのセリフだと、見ながら思ったんですよ。口に出すことで、今この状況をきちんと自分の中で俯瞰(ふかん)して見なきゃ、っていうセリフだなと思って。だから好きなセリフではありますけど、本当に万策尽きてる人たちじゃないと思うんですよね。

 僕だって今まで尽きたことないですよ。お風呂に入るとか、頭冷やすとか、時間が解決するとかも「策」じゃないですか。何かしらの策は講じられるんで、尽きてないですよね。尽きるときって生命体として終わってると思います(笑)。

──では最後に相馬さんどうでしょうか? 結構ピンチになる機会が多いと思いますが。

相馬:田村さんがおっしゃったことと僕も一緒で、僕らが万策尽きてしまったら、それって、もう放送できない、公開できない事態なので(笑)。それはやったことはないんですけど、万策尽きないようにどうするかを考えなきゃいけない立場にはいますね。実際、現場で「万策尽きた」っていうときはあるんです(笑)。無理だっていう瞬間は今回の劇場版でも本当に何回もありましたよ。

田村:え!? そうなんですか!

相馬:(笑)。はい。でも、その「万策尽きた」っていうのは、別に作れないとか間に合わないというのとは違って、スタッフの「ここまで作りたい」という理想があるんですけど、それを100%まで全部やれるかっていうと、なかなかできないときもあるんですよね。例えば、テレビシリーズを見ていただいてる方はわかると思いますが、『えくそだすっ!』という作品を制作していたときに、「もう間に合わないからカットの内容を変えましょう!」みたいなシーンがありましたよね。要はカットの内容を簡単にして間に合わせましょうっていう。そういう現場の負荷を下げて、なんとか成立させるみたいな交渉事を延々やっていかないと、なかなか完成しないんです。

 本当は全部100%にできればいいんですけど、それをやっちゃうと万策尽きちゃうことがあるので。そうならないように事前に調整を常にしてるんですけど……。まぁ、正直すっごい頭が痛い(笑)。監督とぶつかることも何度もあるし、監督以外のスタッフとぶつかることもあるので、そういうときは夜中にひとり、机で頭を抱えてます。