上半期だけで多くの有名人が引退を発表した2020年。元AKB48の渡辺麻友など、まだ人気のさなかにいるアイドルが突然引退を発表する一方で、木下優樹菜のように、雲隠れ同然の去り方をする人も。週刊女性連載陣の芸能ウォッチャー宝泉薫がこれまで引退したあの人たちの去り際をプレーバック!

最も美しい芸能界引退とは

 芸能史上、最も美しい引退をしたのは誰か。そんなアンケートをしたらいまだに1位は山口百恵だろうか。歌手としても女優としても脂ののりきっていた21歳のとき、

愛する人が最も安らぎを感じる場所になりたかった》(自叙伝『蒼い時』より)

 として、結婚とともに家庭に入ることを決断。引退コンサートでは最後にマイクを置いて去るというけじめのパフォーマンスを行い、それ以降、復帰はしないというスタンスを継続している。こうして自らの引退を美しい「作品」にしたのだ。

 そんな彼女の成功は、一種の流行を生んだ。都はるみ森昌子も寿引退(都は事実婚)で続こうとしたし、それを夢見て泥沼にハマったのが中森明菜だ。また、統一教会の合同結婚式で「神の花嫁」となって以降、引退状態となっている桜田淳子のような人もいる。

 ただ、百恵以降、彼女を超える美しい引退はなかなか見当たらない。それ以前には、原節子がいるのだが、これはまた別格だ。映画の黄金時代に小津安二郎監督作品のヒロインとして活躍したこの美人女優は、小津の死とともに43歳で銀幕を去った。そのまま独身を貫き「永遠の処女」と呼ばれながら、95歳で亡くなるまで神秘的な存在であり続けたのである。

 そんな美しい引退と、そうでもない引退を比べると、その違いがはっきりと見えてくる。惜しまれ続けること、そしてスキャンダラスでないことが重要だ。

 その点、今年5月に引退した元AKB48渡辺麻友はこの先、美しく語り継がれていく可能性がある。恋愛禁止というルールに苦しむアイドルも多いなか、ノースキャンダルを貫き、

健康上の理由で芸能活動を続けていくことが難しい

 という同情するしかない事情からの決断。同じAKB系のアイドルでも、総選挙の際に結婚宣言をして、ひんしゅくを買った須藤凜々花とは対照的だ。こちらは翌年、結婚して、そこから9か月後に引退したが、ほとんど話題にならなかった。

 また、今年3月にはタレントのブルゾンちえみ引退。ただし、やめるのは芸人で、今後は本名の「藤原史織」として環境問題などについての発信をしていくという。一発屋枠で生き延びようとする芸人が多いなか、斬新かつ思い切りのいい選択だ。

 これにひきかえ、ちょっと痛かったのが俳優・高岡蒼佑引退だ。《すべて出し尽くし、演りきりました》と語ったものの、テレビ局批判やケンカによる逮捕など、度重なるスキャンダルで追い込まれたようにも見えた。しかも、

本日(8月3日)を境に、俳優業をやる事は永遠に御座いません

 とまで断言。山本裕典のように、同じくスキャンダルの蓄積で1度引退しながら復帰して、コロナ禍のクラスター問題で悪目立ちしてしまった人もいるだけに、高岡の今後も心配だ。

 とまあ、引退といってもさまざま。ここからはジャンル別に、その悲喜こもごもを見ていくとしよう。