竹内さんが遺してくれたもの

 前出の映画『星に願いを。』は、死んだ恋人と再会する役、同じ年に草なぎと共演した映画『黄泉がえり』も死者の復活が主題だ。草なぎとの再共演となった映画『僕と妻の1778の物語』ではガンで亡くなる役で、彼女のために作家の夫が毎日、短編小説を書き続ける話である。そして、最初の結婚のきっかけとなった映画『いま、会いにゆきます』は、生き返って夫と子供のもとに戻ってくる役だった。

 この結婚の3年後、離婚したあたりから、役の傾向が変化していく。

 敏腕刑事を演じ、映画化もされた『ストロベリーナイト』(フジテレビ系)など、強い女性を演じることが増えたのだ。泣きの芝居が好きな者としては、ちょっとさびしい気もしたが、シングルマザーとなり、当時は私生活で涙を見せることもあったことだろう。

 そんななか、新たな面も見せてくれた。映画『コンフィデンスマンJP ロマンス編』での女詐欺師の役だ。騙し合いを繰り広げた相手は、7月に亡くなった三浦春馬さん。彼はパンフレットで「楽しかった」としてこんな裏話をしている。

音声は入っていないんですが、実は竹内さんと即興でおふざけの芝居もしていたので、そういった部分でも印象深いです

 それがどういうものだったのか、ふたりの口から語られることはもうない。

 年を重ねたことで、母親役を演じるようにもなり、NHK大河ドラマ『真田丸』では豊臣秀頼(中川大志)の母・茶々の役だった。そういう機会は今後、ますます増えていったはずだ。

 できれば将来、昨年の朝ドラ『なつぞら』で松嶋菜々子が実現させたような「ヒロインの母親役での里帰り出演」を見たかった。彼女もまた、21年前の『あすか』に主演した朝ドラ女優である。母親役での涙も、素晴らしいものになったことだろう。

 ちなみに、彼女は前出の映画『僕と妻の1778の物語』のパンフレットのなかで、こんな死生観を明かしている。

(命は)いつかなくなる儚いものかもしれませんが、誰かに何かを遺したいとか、自分のことを憶えておいてもらいたい……そういう気持ちは、ものではない何かを確実に遺せるような気がします

 死にゆく妻のために短編小説を書き続けた作家の想いを想像しての発言だが、ファンにとっては、彼女が生涯をかけて遺してくれた作品の数々から、ものではない何かを受け取れるのかもしれない。

 今後も再放送や映像ソフトで、彼女の芝居を見て泣くことはできる。そのことにせめてもの感謝をしつつ、冥福を祈りたい。

PROFILE●宝泉 薫(ほうせん・かおる)●作家・芸能評論家。テレビ、映画、ダイエットなどをテーマに執筆。近著に『平成の死』(ベストセラーズ)、『平成「一発屋」見聞録』(言視舎)、『あのアイドルがなぜヌードに』(文藝春秋)などがある。

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