慈恵病院のこうのとりのゆりかご。父親とみられる男性と預けに来る女性も
慈恵病院のこうのとりのゆりかご。父親とみられる男性と預けに来る女性も
すべての写真を見る

 1人で自宅での出産は赤ちゃんが亡くなる確率も高い。

「亡くなれば母親は罪に問われます。母子を守るためにはきちんと相談ができ、安全な場所でお産ができるよう、社会全体で考えなくてはいけません」(前出・担当者)

 逮捕、起訴されれば母親は法廷でこれまでの人生から家族関係、男性との関係まで洗いざらい、公にされる。

「罪の思いに苛まれ続け、女性の将来はめちゃくちゃになってしまいます」(同)

男性は“出したら終わりの生き物”

 一方の『無責任な父親』たちはのうのうと生き続ける。新潟青陵大学の碓井真史教授(犯罪心理学)は、

「男性に罪の意識はないでしょうし、遺棄されたのは自分の子どもとも思っていない。母親に対しても愛した女性という感覚も鈍い。人間の心理は自分に都合よく物事を考えるようになっているので、自分のことは棚に上げ、逮捕された母親に対して、“俺に迷惑かけるな”という意識を持つことが考えられます」

 竹田さんは以前、19歳の元彼からレイプされ、妊娠した18歳の女性から相談を受けたことがあった。竹田さんが相手の男性と対峙すると、

「オレの子じゃない、責任はない、の一点張り。謝罪はおろか、彼女の身体の心配もお腹の子どものことも何も言っていませんでした」

 女性は当初、妊娠を誰にも相談できず最悪、出産後に遺棄していた可能性も否定できなかったと明かしたという。

 ではなぜ『無責任な父親』が生まれるのか。

「言い方が悪いですが、男性は“出したら終わりの生き物”。身体の関係を持ったら終わりです。でも女性はそこからがスタート。連絡もとって、お付き合いも望みます。妊娠すれば女性は2人の間にできた子だから2人の責任と考えますが、男性はそうは思いません。都合が悪くなると逃げる生き物です」(同)

 事件が起きれば「父親は誰だ」と世間は注目するが、公にはならない。社会的制裁も受けず、法的責任もないことが無責任さを助長させる。

「遺棄の幇助、とまではいかなくても父親になんらかの責任をとらせることができる法整備は必要です」(同)