名作曲家のお気に入りアーティスト

 そんな筒美さんお気に入りのアーティストを紹介しよう。

2011年、数々のヒットを共作した作詞家の松本隆(右)と談笑する筒美さん(川原さん提供)
2011年、数々のヒットを共作した作詞家の松本隆(右)と談笑する筒美さん(川原さん提供)
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岩崎宏美さんは、特にお気に入り。高音が魅力だと思っていた彼女の、中低音のよさを見抜いていました

 南沙織さんもお気に入り。沖縄から出てきてレッスンでピアノを弾きながら好きな曲を歌うように言ったら、英語がいいと。そこで『ローズ・ガーデン』というカントリーの曲を歌ったら、すごくよかった。その曲にそっくりの『17才』が生まれたんです。

 太田裕美さんもお気に入り。特に歌がうまいわけではないけど、声の特徴を見抜いたようで、1975年に『木綿のハンカチーフ』が生まれた。

 本田美奈子.さんは歌の実力もマドンナみたいに目立ちたい欲求も理解していましたから、5曲目の『1986年のマリリン』でドカーン! となりましたね。ほかにも尾崎紀世彦さん、野口五郎さんなど提供曲が多い人は、京平さんのお気に入りでした」(前出・恒川さん)

 生き馬の目を抜く芸能界で、ひたすらヒット曲を追い求めて金字塔を打ち立てた巨星に悪評は皆無だ。

 かつて筒美さんは自らの仕事を“はやり歌作家の良心”と評したこともある。前出の小杉さんが振り返る。

「まったく嫌味がないし人の悪口を言っているのを聞いたこともない。インテリでカッコいいし奥ゆかしい。そんな男になりたいと憧れました」

 裏方に徹した歌謡曲への“良心”が築いた偉業は忘れられることはない。