『澪つくし』のチームを作って野球の試合

 沢口靖子とはクランクインするまでの数か月、一緒に特訓を受けたという。

「新人7〜8人が週3日くらいNHKに通って。演技だけでなく、若手同士でコミュニケーションをとって仲よくさせるのが目的。スタッフさんに温かい雰囲気をつくってもらいました。

 靖子ちゃんは美しさ、ピュアさが秀逸な一方で、ときどき“え、そう来る!?”みたいな天然な魅力がありました役に命を吹き込むのに全身全霊がいっちゃって、ほかのことに気が回らない。そこが周りをホッとさせて、なごませていましたね」

 番組は4月1日の初回で37・1パーセントの視聴率を記録。さらに数字を上げていく。

「本当に一気に、という感じでした。昨日まで運動部で走り回っていたのが、取り巻く環境が急変して戸惑いました」

 NHKには電車で通っていたが、長身に丸刈りはやはり目立ったようだ。

「当時はマスクをする人はいなかったし、最初は帽子もかぶらなかった。わざわざ隠すほど有名人じゃない、みたいな感覚もあったから、よく声をかけられました。うれしい感覚もあるんですけど“いいのかなぁ……”と。なんか怖さも感じました」

 ドラマで醤油屋は“陸者”漁師は“海者”とされ反目し合うなかで、かをると惣吉の結婚がなかなか認められない展開は「銚子のロミオとジュリエット」とも言われ、視聴者をやきもきさせた。

当時20歳と25歳。息もぴったり
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「ふたりは最初から好き合っているのに、ドラマではすれ違う展開が多く、なかなか会えない……。演じる僕的にもたぶん、かをるにひと目惚れしたと思うんですよね。でもふだんから靖子ちゃんと親密にしていると出会ったときのうれしさが薄れてしまうから、なるべく声をかけないようにしようと、自分を抑え込んでいました

 その禁がとけたのはドラマ中盤、ふたりがようやく結ばれてから。

「結婚して、家族の愛情になっていく。スタッフさんも急にふたり一緒に外に連れていってくれたり、“昼メシ、誘えよ”とか、けしかけられていましたね(笑)。自分自身の感情としても、ドラマなのか現実なのかわからなくなるような瞬間もありましたよ

 全盛期の朝ドラだけに、出演者は津川雅彦、加賀まりこ、草笛光子など演技巧者ぞろい。若き日の明石家さんま、根岸季衣も姿を見せる。特に親しく接した共演者の名前を聞いてみると……。

柴田恭兵さんは本当によくしてくれました恭兵さんは野球が大好きで、僕も野球部だったので澪つくしのチームを作って試合をしましたね。スタジオでもポーンと空き時間があると“太郎、バッティングセンター行こうか”と、あのビブラートの声で誘ってくれるんです。恭平さんの車にはバットが何本か積んであって“これ使う?”。またあのビブラートの声で(笑)」