得意だった芸風がさらに揺るぎないものに

 '80年代には学園ドラマで、このタイプの一発屋が誕生。『3年B組金八先生』の第2シリーズ(TBS系・'80年)で“くさったミカン”こと、加藤優を演じた直江喜一(57)や『スクール☆ウォーズ』(TBS系・'84年)でイソップを演じた高野浩和(53)だ。

『スクール☆ウォーズ』のイソップ役のイメージが強すぎる!? 高野浩和
『スクール☆ウォーズ』のイソップ役のイメージが強すぎる!? 高野浩和
【写真】ドラマや映画で主役よりも目立つ“名脇役”、あなたは何人知っている?

 売れた勢いで歌手デビューもしており、それぞれ『オレはオレンジなんかじゃない』『イソップ物語』といった一発屋ならではの作品を残した。

 直江はその後、引退して建築会社に就職したが、副業として役者の仕事も再開高野は引退してカツラメーカーに就職し、復帰はしていない

 学園ドラマといえば、'00年代の名作『ごくせん』(日本テレビ系)からも味のある一発屋が出た。イケメン系の生徒役がそろうなか、100キロ超の巨体で目立った、クマこと脇知弘(40)だ。第1シリーズ('02年)だけでなく、第2('05年)第3('08年)シリーズにも社会人役で出演。昨年のコロナ禍で連ドラが特別編成となり『ごくせん』が再放送された際には、こんな思い出を語った。

強面の役で視聴者の記憶に残る脇知弘。バラエティー番組でも活躍
強面の役で視聴者の記憶に残る脇知弘。バラエティー番組でも活躍

例えば、教室のシーンで、前列にいるやつが立ち上がったりすると“なにやってんだよ、映らないだろ”って口論になったり(笑)。みんな映りたいから、当然ですよね。でも、そのときに潤くんが“俺は全身が映らなくても、どこかで(カメラに)抜かれるからそんなに気にならないな”って言ってて。年下ですけど、すげえカッコいいって思いました」

 第1シリーズで共演した嵐・松本潤(37)についてのエピソードだ。脇は大野智(40)の連ドラ初主演作『魔王』(TBS系・'08年)にも登場。持病のぜんそくで急死する取り立て屋を演じた。

 学園ドラマではないが、昨年のNHK朝ドラ『なつぞら』で、番長を演じた板橋駿谷(36)も役名(ニックネーム)とのシンクロ具合がすごかった。34歳なのに高校生というギャップも話題になり、引っ越し会社のCMもゲット。おそらく、あのCMを見る人の多くが「あ、番長だ」と叫んでいるに違いない。

木下ほうか
木下ほうか

 バラエティーでの役名が定着してしまったのが『スカッとジャパン』(フジテレビ系)の“イヤミ課長”こと木下ほうか(56)だ。

 弱きをいびり、強きに媚びる裏表のある役を毎週のようにやっているうち、もともと得意だった芸風がさらに揺るぎないものに

 昨年『七人の秘書』(テレビ朝日系)にゲスト出演したときも、警視総監にへつらいながら、部下の犯罪をもみ消したりする警務部長の役だった。

 一方、私生活では熱心な献血活動でも知られ、骨髄バンクのドナー登録までしている。そのきっかけについては、こんな過去も明かした。

「大学時代に同じ演劇科の同級生だった女性と4年間付き合っていたんですけど、のちに彼女が『急性骨髄性白血病』で亡くなってしまって……。まだ29歳という若さでした」

 役柄とは対照的な秘話。こういう素敵な「裏表」もある人なのだ。