かつて世間の注目を集めた有名人に「あのとき、何を思っていたか?」を語ってもらうインタビュー連載。当事者だから見えた景色、聞こえた声、そして当時は言えなかった本音とは? 第19回は、自伝『ホームレス中学生』が大ベストセラーになったお笑いコンビ・麒麟の田村裕(41)。印税2億円の使い道から大金を手にしたからこそ伝えたいこととは―。

『ホームレス中学生』ができるまで

「ただの身の上話なので、僕自身はホームレスを経験した話がウケるとはまったく思っていなかったんです」

 '07年、幼少時代からコンビ結成までの話をまとめた自伝『ホームレス中学生』が225万部の大ベストセラーとなったお笑いコンビ麒麟の田村裕。中学2年生のとき自宅が差し押さえられてしまったことで、ホームレス生活を経験することに。

「いま思えば、パチンコで言うところの激アツ演出がたくさんあったんです。小学生までは商店街や学校が近くにある便利なエリアの団地に住んでいたのですが、中学入学の日に学校から遠く離れた場所に引っ越し。兄がバイト代で買ったミニコンポが突然なくなったかと思えば、その次はエアコンがなくなったり。それである日、帰宅したら自宅が差し押さえられていて、父親に“これからはおのおの頑張って生きてください。解散!”と言われたり……

 兄や姉がいたものの、ひとり公園で暮らすホームレス生活を選択する。

「兄や姉に迷惑をかけたくなかったのと男の子なので冒険に憧れていた部分があったんです。ひとりでも大丈夫なんじゃないかという思いもありましたね。でも空腹だけでなく知り合いに見られてしまうんじゃ……という恐怖心で追い込まれていきました。犯罪者でもないのに、何でこんなつらい思いをしなきゃいけないんだと思っていました

 友人の親などのサポートもあり、無事にホームレス生活から抜け出せた田村。そんな経験を話せるようになったのは、ある先輩のアドバイスだったという。

楽屋でFUJIWARAの原西孝幸さんに話したら“舞台でも話したほうがいいよ”と言われて。僕自身は麒麟というコンビは相方の川島くんが目立てばいいと考えていたので、僕の話なんかしてもウケないだろうと思っていたんです。でも先輩からアドバイスをしてもらったので、1度、舞台で話してみたところ笑ってもらえたんです」