1月15日、女優の森七菜が、二階堂ふみや土屋太鳳、橋本愛らが所属する『ソニー・ミュージックアーティスツ』に、所属事務所を移籍する可能性が濃厚であることが突如報じられた。所属していた『ARBRE(アーブル)』のホームページからプロフィールが削除、公式インスタグラムのアカウントも閉鎖されていたことが発覚し、世間が驚きに包まれていた矢先のことだった。

日刊スポーツが『ソニー』に取材をしたところ事実を認め、今後は“整い次第案内をする”とコメントしていましたが、前事務所としては稼ぎ頭を失ってしまったかたちです。彼女以外に所属タレントは2人しかいないのですが、どちらもまだ売れっ子になる前の段階ですから、打撃でしょう」(スポーツ紙記者)

“引き抜き”のケースも

 森は地元・大分にいた中学3年生のとき、母親と食事に行った際にスカウトに声をかけられ芸能界入り。高校卒業までは実家で暮らし、仕事が入るたびに片道5時間をかけて上京していたという。

「事務所に入って間もなく、オーディションで行定勲監督の目に止まりました。そこからアニメ映画『天気の子』でヒロインを務めるなど、とにかく“オーディションに強い”女優さん。オーディションは業界内での“事務所の力関係”に左右されることなくチャンスをつかむことができます」(芸能プロ関係者)

 しかし、今回の“電撃移籍”に関しては先に前所属事務所のHPから削除されたことが明るみになった印象も影響してか、

《小さな事務所らしいけどせっかくお世話になって売り出してくれたのだからもう少し恩返ししても良かったんじゃないかな》

《相当こじれた遺恨ののこる移籍劇だったんだろうな》(編集部で脱字を加筆)

 などと“不義理である”との声も多い。小さい事務所から巨大事務所への移籍……あまり語られることのない芸能界の暗黙の掟について芸能ジャーナリストの佐々木博之氏はこう解説する。

「前事務所と契約書を交わしていた場合、それが満了してから移籍するというのが一般的です。ただもうひとつ、契約中に“引き抜き”というかたちで移籍するケースも。その場合は新しい事務所が“移籍金”を支払うことが多いです。場合によっては億単位になることもありますね

 近年では2018年にソニンが、2020年には田中みな実が大手事務所への移籍を果たしている。かつて風吹ジュンが事務所の給与待遇に反発して別のところに移籍しようとしたが、「考え直すよう」と、に関係者に連れさられてしまう(1974年『風吹ジュン誘拐事件』)といったことが起こるなど、タレントの移籍にはトラブルがつきまとうこともある。根本の原因は何があるのだろうか。

たとえば俳優同士が撮影の合間などに所属先の給与体系や待遇について話しあうというのはあるあるですね。小さい事務所だと稼ぎ頭に会社の売り上げを大きく依存することになるので、ギャラに関しても事務所の取り分が多くなる。

 大手のタレントがマネージャーの運転する専用の移動車に乗り込んで現場をあとにするなか、自分はタクシーや電車での移動、といった悔しい経験をする者もいます。そういったことから待遇に不満を募らせていくんです」(芸能プロ関係者)

 確かに、事実は定かではないが、森七菜と二階堂ふみは朝ドラ『エール』で姉妹役を演じていた。共演時間が長いとそういった会話もした……のかもしれない。

 それでは、弱い事務所が手塩にかけたタレントが“売れた”となったとたんに巣立っていくという悲しき風習を変えることはできないのだろうか。

広末涼子さんが所属する『フラーム』というところは今や戸田恵梨香さん、有村架純さんなどが所属する巨大事務所ですが、当時は広末さんしかいないといった印象でした。しかし、大手である『芸映』と業務提携を結ぶことで、大きな仕事を勝ち取るようになり、そこから経営を大きくしたという成功例もあります。

 また、そこまで大手でないところだと給料制の場合も多いですが、 “大きい仕事のときはボーナスを支払う”などいった待遇の改善を行い、タレントの流出を防ぐ事務所もありますね」(前出・佐々木氏)

 どの業界も中小企業が生き残っていくのは大変ということか──。