非行少女だった中学生時代、落ち切った人生をネタにかえようと一念発起。有名大学、大手企業へ。だが、うつ病により休職。復帰後、『冷たい社会』を痛感した。誰かの背中を押せる仕事を求め、たどり着いた受刑者向けの求人誌作り。

 今、受刑者に立て直しのチャンスを届ける傍ら、納棺師として生計を立てる。2つの仕事に込める思いは同じだ。どんな人も最期は笑ってほしい―。

 そんな思いを語る間も、三宅さんはよく笑っていた。

受刑者向けの求人情報誌を創刊

 そこにいるだけで三宅晶子さんは目立つ。30代後半から白髪が増え、49歳の今はほぼ真っ白だ。

「父も若白髪だったので遺伝ですね。黒く染めるのが面倒だし、他人と違っても差別しなさそうな人だと、ひと目見てわかってもらえるアイコンになったらいいなと」

 違いは外見だけではない。三宅さんが手がける仕事もユニークだ。

 日本で初めて、受刑者向けの求人情報誌『Chance!!(チャンス)』を2018年3月に創刊。年4回の発刊で全国の刑務所、少年院などに置かれている。同誌を通じて、これまで108人が出所後の居場所を得た。

 最新の2020冬号には25社が求人広告を出している。最も多い求人は建設作業員。ほかにはドライバー、介護など人手不足の業種が目立つ。仕事内容、給与、待遇など基本的な情報のほか、採用が難しい罪状や条件も細かく書かれている。

「殺人、放火、性犯罪、覚せい剤累犯」「長袖長ズボンを着て入れ墨が見える人」などは不可とする企業が多いが、なかにはどんな罪状でも受け入れる企業もある。

「『Chance!!』が自分を変えるきっかけになった」

「三宅さんの言葉に救われた」と語った大伸ワークサポートの朝倉大輔さん 撮影/伊藤和幸

 そう話すのは栃木県の建設会社『大伸ワークサポート』で働いて2年になる朝倉大輔さん(39)。窃盗で2度目に服役した刑務所の中で同誌を知った。

《自分も受刑者の気持ちがわかる。絶対に見捨てない》

 会社の紹介ページに載っていた社長のコメントに惹きつけられ、三宅さんと社長に手紙を出した。何度か手紙でやりとりして罪を犯した背景などを詳しく説明。その後、社長が刑務所に面接に来てくれて採用が決まったという。

「ここに来てからも、“ああもうイヤだな、仕事に行きたくない”とか、何度も落ちそうになりましたよ。でも、そのたびに社長や同僚が話を聞いてくれて。それまで心の底から話せる相手がいなかったので救われましたね。結局は自分の意思の問題なんですけど、自分を心配してくれる人たちを裏切れないですから

 初めての給料が出ると朝倉さんは、三宅さんに食事をごちそうしたそうだ。

「最初に刑務所に入ったとき親から“手紙も寄こさないでくれ”と言われて、もう自分を必要としてくれる人なんていない。ずっとひとりで生きていくんだろうなと。でも、三宅さんは“必要とする人は必ずいる”と返事をくれて、心強かったです」

 三宅さんの会社に全国の受刑者から寄せられる手紙は年間約1000通。三宅さんひとりでは手が回らなくなり、外部スタッフに業務委託をして対応。受け入れ先企業のサポートもしている。