“二股疑惑”の文字が踊る

 そして、当時、週刊誌界隈で話題なっていたことがもうひとつ。

 同時期に、愛ちゃんに別の男のカゲがあったことだ。お相手はイケメン卓球選手・大矢英俊。青森山田中・高時代の同級生で、高校時代から付き合ったり別れたりを繰りかえしていたらしく、友人に「今は微妙だけど、戻るつもり」と言っていたところ、間もなく、錦織との熱愛報道が出たのだという。この件について“二股疑惑”と打つ媒体もあった。

 我々はつい、「愛ちゃんは恋愛に対してウブなんじゃないか」といったイメージを持ちがちだが、実情は異なるのかもしれない。勝手に純情を期待してしまうのは当然、“泣き虫愛ちゃん”が刷り込まれているからにほかならない。みな、親戚の気分で見守っているのだ。

 こういった“熱愛スキャンダル”はなぜあまり話題にならなかったのだろうか。そこには、彼女による「プライベートを守らんとする」鉄壁のディフェンスがあったのだと今更ながら実感させられる。

 錦織との熱愛発覚後に『週刊現代』が両所属先に取材をしたところ、錦織サイドはお決まりともいえる《北京五輪で知り合い、良い友達だと聞いています》と返したのだが、福原の個人事務所は《コメントできない》と実にそっけないものだったという。プロツアーの欧州遠征から帰国し、成田空港に待ち構えていた60人のマスコミを前にしても「お騒がせして申し訳ありません」の一言だけを残し、うかない顔で去っていった。

錦織圭との交際について報道陣の取材を受ける福原愛(2008)
【写真】もはや黒歴史? 台湾のテレビ番組で流れた福原愛と夫のキスシーン

 思い出されるのは前述のインタビュー取材での《色んな人に見られる暮らしが本当に嫌になったんです》の言葉。勝手に“泣き虫”とキャッチコピーをつけられ、好まざるとも日本全国に愛でられてきた彼女の反動をそこに感じるのだ。

 2016年に『週刊文春』の名物企画『阿川佐和子のこの人に会いたい』に登場したときも守りの堅牢ぶりを発揮。聞き手のプロである阿川さんを前に、直近のリオ五輪で活躍したという、選手としての話ばかりに終始。『対談後記』で阿川さんはこのように綴っている。

《対談前、福原さんの事務所から「対談は競技のことだけにしてください。今後のことについて聞かれても答えられませんので」と厳しく言われていたので触れられませんでしたが、なんと私がお会いした翌日に入籍なさっていたのですね。メッチャ驚きました》

 もちろんお相手は電撃結婚した江宏傑である。対談は結婚発表後に公開される記事とわかっているのだろうし、あの“文春砲”とて、真っ向からの対談取材で得た話を、「スクープ速報! 福原愛結婚へ」などとニュースにする不義理はしないだろう。やはりそこには、マスコミに対し、徹底的にクローズドなスタンスを保っているような気がしてならない。

 それでいながら、2018年の現役引退会見のときは、

《あのときは泣き虫じゃないもんって何回も思った。でも、最後のリオも泣いちゃいましたし、やっぱり泣き虫。なので『泣き虫愛ちゃんだよ』って言いたいです》

 と心のネットを突き破るスマッシュで、“全国の親戚一同”の涙腺を決壊させてみせる。わずか4歳のころからマスコミに取り上げられすぎて、自分がどう映るか、そして自分をどう見せるべきかを誰よりも自覚しているのかもしれない。ある意味メディアの申し子、天才子役でもあったのである。