不登校経験者がうれしかった言葉

 まずは子どもの意思を尊重し、受け入れる。そのうえで、親としてわが子のために何かしてあげられることは?

「“もしよかったら今の気持ち話せる?”という感じで、子どもの気持ちを聞いてあげてください。重要なのは、話ではなく気持ちを聞くこと」

 学校に行けない理由を問い詰めるのではなく、話したいことを聞く。子どもの気持ちがわかれば、親も具体的な対処の方向性が見えてくる。

 なかには親や周囲を拒絶し、話を避けようとする子どももいるが、「その行動自体が彼らのメッセージ」と石井氏。

「周りをシャットダウンする子どもは、そうやって自分を受け入れてもらえるか試しているんです。気持ちを解きほぐすのは、そんなあなたでも受け入れているよという態度。

 それは本当に簡単なことで、“ご飯できたよ”など普通に一緒に暮らすだけ。そうやって愛情が染みわたり、本人が自然と話したくなるのを待って。必ずそのときは来ます

 いざ子どもが話し出したからといって、焦って先を急いではダメ。気持ちを聞く際、心がけたいポイントがある。

「話を途中で遮ったり、否定しない。傾聴するということです。悩んでいるときは特に話があちこち迷走したり、ダラダラ長くなりがちだけど、本人は話すことで気持ちを発散しているので、最後までとことん聞いてあげてください」

『傾聴』はカウンセリングの技術のひとつ。親子間の問題だけではなく、人間関係全般に通じるスキルだ。

学校に行きたくない子どもの話は長時間に及んだり、毎日同じ話になることも。それでもじっくり傾聴するのが最重要
学校に行きたくない子どもの話は長時間に及んだり、毎日同じ話になることも。それでもじっくり傾聴するのが最重要
【写真】日本で唯一の「不登校問題」を紹介する新聞

「『オウム返し』も効果的なカウンセリング技術のひとつ。“悲しかった”“悲しかったんだね”と最後の言葉を繰り返して共感を示してあげる。

 例えば“殴ってやりたかった”など親として同調したくない言葉でも、否定せず“殴ってやりたかったのか”とオウム返しをしていると、本人自身がそんなことをしてはダメだと現実に戻ってくるんです」

 子どもの話にひたすら耳を傾ける。親に大きな忍耐を強いる時間になるが……。

「苦しいことがあったとき、気持ちの整理をすることで大人になる。その過程にいると思って、ここは親の頑張りどころ」と石井氏。