医師の夫が看護師の女と不倫

 佳乃さんと夫の交際は順調に進み、結婚。しかし、結婚5年目に夫の不倫が発覚。相手は同じ病院に勤める看護師の女性でした。

 もともと夫は週末になると友人が経営している病院を手伝いに行くことが多く、その病院の近くにワンルームの部屋を借りていました。これは他の同僚医師も使っており、6人で家賃をシェアする形をとっていました。自宅に帰る気力がないときは、その部屋に寝泊まりすることを佳乃さんも了承していたのですが、その月は毎週のように宿泊していました。

 佳乃さんも「さすがに多すぎるのでは? 本当に仕事なの!?」と訝(いぶか)っていたのですが、夫は佳乃さんより弁が立ち、強気な性格。何の証拠もなしに問い詰めても「だから何なんだ!」とシラを切るのは目に見えています。そこで佳乃さんは探偵事務所に調査を依頼。週末には病院から尾行し、部屋に入るところを確認する段取り。後日、担当者から報告書を渡されました。

 佳乃さんがおそるおそる報告書を開くと、そこには夫と女性がシェアルームに入り、翌朝、2人が部屋から出てくる写真が封入されていました。その決定的な証拠を突きつけ、夫に「これってどういうこと?」と問い詰めたのです。

「ああ、莉子だろ? もう飽きたよ。盛り上がったのは最初だけだ。一時的に付き合っていたけれど、もう恋人じゃないよ。僕だって仕事や家への影響もあるから本気にはなれないし」

 夫は莉子(仮名・29歳)という不倫相手との関係をそんなふうに弁解しました。佳乃さんは「シェアルームの鍵を返す」という夫の言葉を信じ、今回の件を水に流すことにしたのですが……。

夫がまた「裏切り」も、離婚できない事情

 それから2か月後、佳乃さんのスマホにLINEが届きました。「○○ホテルの402だよ。早く来てね」と。送り主は夫でした。佳乃さんは夫とホテルに宿泊する予定はありませんでした。とっさに「莉子に送るLINEを間違えて私に送ったのね」と女の勘が働きました。佳乃さんは「誰に送るはずだったの?」と返事をするのを我慢し、すぐにまた探偵事務所に依頼しました。

 具体的には402号室の前に隠しカメラを設置し、待ち合わせの様子を撮影しようと試みたのです。佳乃さんの勘は的中。部屋に入ったのは女でした。後日、担当者に渡された報告書には2週間のうち3回、同じ女性がホテルの部屋に入り、3時間ほど滞在し、出てくる様子が映っていました。もし女性がデリヘル嬢なら気持ちの伴わない情事なので「見なかったこと」にすることも可能だったかもしれません。しかし、佳乃さんはその女性に見覚えが……そう莉子でした。つまり、夫は夫婦の間で交わした約束を早々に破っていたことが明らかに。

 夫の悪事を許し、夫の言葉を信じ、そして夫の改心を待っていた佳乃さんを「また」裏切ったのです。しかも前回の発覚から今回まで2か月足らず。舌の根も乾かぬうちに同じことが起こるなんて……夫は守るつもりで約束したのか、もしかすると「どうせ大事には至らないだろう。まぁ、大丈夫」と最初から破るつもりだったのではないか──苦しむ佳乃さんから報告を受けた筆者は首をかしげました。

 何より佳乃さんのことをいい加減に扱い、軽んじ、甘く見ている証拠です。しかし、佳乃さんには今すぐ夫を詰問できない理由がありました。もちろん、夫は再度、謝罪し、改心すると誓う可能性もありますが、万が一、逆の目が出たら……「何が悪い」と開き直り、「医者はみんな、そうなんだよ」と怒り出し、「誰のおかげで飯を食えているんだ!」と逆ギレしたら、どうなるでしょうか?

 どんなひどい暴言や悪口を言われようと佳乃さんは離婚することができません。年収2000万円を超える夫におんぶに抱っこ。まだ娘さんは4歳で夫に懐いています。何より夫は実家の家業の跡取り。父親に相談したら「絶対に別れるな、お前が我慢しろ!」と反対されるに決まっています。