不倫の再発防止のため「違約金」を設定

 さすがの夫も莉子さんの逝去にショックを受け、憔悴しており、げっそりした様子。佳乃さんは「これで十分、お灸をすえたと思うのですが……」と言うのですが、確かに不倫相手の死亡は稀有な事情です。しかし、筆者は初めて遭遇したわけではありません。過去にあった同じようなケースでは、喪に服している間、夫は静かでした。しかし、ほとぼりが冷めたら、また元に戻り、別の女性を口説き始めたのです。やはり人間の本質はそう簡単に変わりません。夫は過去に佳乃さんを2度も裏切っているのだから、相手は違えど3度、4度と同じことが繰り返されてもおかしくはないでしょう。

 実際のところ、同じことが起こると困るのは経済的な理由で離婚できない佳乃さんのほうです。そのため、不倫の再発防止策を念には念を入れて作成する必要があります。莉子さんの死を受けて夫は佳乃さんに「何でもする」と白旗をあげているので、どのような条件を許すのかを佳乃さんが自由に設定することができます。まず筆者は「違約金を設定してはどうか」と提案。単に「不倫をしない」という言葉を信じるのは無理です。

「再度不倫をしたら〇〇〇万円支払う」という形で違反した場合のペナルティを付け加えます。夫が払えないだろう金額なら怖くて違反することができないでしょう。佳乃さんいわく「1000万円」なら十分だとのこと。次に「帰宅したら常にスマホのロックを解除してもらっては」と助言。スマホは不倫の必須ツールです。佳乃さんが夫のスマホを見放題なら、夫は発覚を恐れ、ほとぼりが冷めても、女性と不倫したりできないでしょう。

 違約金が発生するのは発覚した場合だけです。発覚しやすい状況を作ることで「違約金を払えないから我慢するしかない」と夫にあきらめさせる効果もあります。最後にアドバイスしたのは「小遣い制」への移行。これは佳乃さんが全ての家計を管理し、佳乃さんが夫へ一定の金額を渡すという意味です。

 交通費やホテル代、プレゼント代……不倫にはデート費用がかかります。夫が小遣いの範囲でデート代を捻出するのが無理なら、妻以外の女性とデートするのを諦めるでしょう。「私が全部出すわ」と夫の分も払おうとする稀有な女性が現れない限り。これら3つの約束を誓約書に書き起こし、夫に署名捺印させ、佳乃さんが預かることに。夫は束縛され、自由を奪われ、息苦しい生活を強いられますが、自業自得です。

 最後に筆者は「きちんと水に流すことが大事ですよ」と言い添えました。悪いのは完全に夫ですが、佳乃さんも今回のことを忘れる努力をする必要があります。結婚生活を続ける上で、今後も意見が合わず、喧嘩になる場面があるでしょう。

 そこで佳乃さんが「不倫した分際で何よ!」と一蹴すると、夫は絶望し、コミュニケーションをとるのをやめ、家庭内別居の状態に陥ります。実際のところ、不倫発覚から数年後、性格の不一致で離婚することも多いです。佳乃さんがいつまでも根に持たず、きちんと夫を許し、前向きに進んでいくことを期待します。

 不倫はどちらか1人ではなく、2人の連帯責任です。今回の場合、不倫相手の死亡という特殊な事情でしたが、不倫相手の社会的地位が高すぎる、名前や連絡先、住所、勤務先等をどうしても特定できない、海外在住なので接触するのが無理などの理由で不倫相手に責任をとらせることが難しい場合もあります。いずれにせよ「夫のけじめ」は入念に行ったほうがいいでしょう。


露木幸彦(つゆき・ゆきひこ)
1980年12月24日生まれ。國學院大學法学部卒。行政書士、ファイナンシャルプランナー。金融機関の融資担当時代は住宅ローンのトップセールス。男の離婚に特化して、行政書士事務所を開業。開業から6年間で有料相談件数7000件、公式サイト「離婚サポートnet」の会員数は6300人を突破し、業界で最大規模に成長させる。新聞やウェブメディアで執筆多数。著書に『男の離婚ケイカク クソ嫁からは逃げたもん勝ち なる早で! ! ! ! ! 慰謝料・親権・養育費・財産分与・不倫・調停』(主婦と生活社)など。
公式サイト http://www.tuyuki-office.jp/