ちなみに、当時の愛読書は矢沢永吉の『成りあがり』。芸能人らしい上昇志向という意味では、紳助たちと同じ精神性だ。実際「“もう絶対成功するんだ”としか思ってなかった」そうで、毛嫌いされても、最終的に認められればいいと考えていたという。

「まさか本当にそういう状況になるなんて夢にも思ってなかったですけど、思い返すと“俺、カッコいいな”って(笑)」

 という「成功」後の発言からは、けっこう悦に入っていることもうかがえる。

 だが、今回、マリエに告発され、そこに一部の人が同調したことで、彼の現実的な立ち位置が見えてきた。

 つまり、世間の期待するイメージは腰の低い小物のまま。彼は依然として、テレビなどで災難に見舞われ、あたふたする姿を世間に面白がられる存在なのだ。

 それゆえ、マリエにもつけ込まれるし、この騒動でもちょっと面白がる人が出てきてしまったのだろう。そこには、リアクション芸が持ち上げられすぎ、やや飽きられてきていたというタイミングも関係していると考えられる。

 とはいえ、あのリアクション芸が唯一無二のもので、彼が愛すべき人柄なのもおそらく間違いない。騒動が収まればまた、本業で面白がられる存在に戻れるだろう。しばらくの辛抱だ。

PROFILE●宝泉 薫(ほうせん・かおる)●作家・芸能評論家。テレビ、映画、ダイエットなどをテーマに執筆。近著に『平成の死』(ベストセラーズ)、『平成「一発屋」見聞録』(言視舎)、『あのアイドルがなぜヌードに』(文藝春秋)などがある。