ところが「日本の顔」を決める総裁選ともなると話は別だ。何しろ派閥の多い党内で推薦人を20人集めないといけない。1955年の自民党結党以来、推薦人を確保して総裁選に立候補できた女性は、2008年に福田赳夫首相の辞任に伴って開かれたときの、小池百合子現都知事ただ1人だ。畠山さんが続ける。

「当選回数が多く、大臣になれない男性議員はたくさんいます。政治家は『俺が、俺が』と前に出てくる人ばかりで、足の引っ張り合いが多い。オジサンたちも嫉妬深いので、そうした男社会の中で、野田氏が推薦人を集めるのは難しい。まだ自分が閣僚にもなれていないのになぜこの人を推薦しなきゃいけないの、と」

 もっともそれは政界だけの問題ではなく、有権者の側にも、適任者を選ぶという目を養う必要があるのだ。

女性に優しい社会の実現を

 第4次安倍内閣で女性活躍担当大臣を歴任した自民党の片山さつき参院議員は、党内の現状をこうきっぱり言う。

「推薦する場合、当然ですが党内でいちばんお世話になった人についていきます。立候補するときに応援をしてもらったとか、役職に推してもらったとか。ところが今の自民党の女性議員の中で、経済的な面も含めて多勢の『子分』を抱え込める実力を兼ね備えた方はいません」

 仮に野田氏が推薦人を確保できたとしても、すでに支持を受けている現職の菅首相に対抗するのは現実的ではない。過去の総裁選でも、現職首相が出馬した場合は、圧倒的な強さを見せた。ゆえに次期総裁選での女性首相誕生という「最短ルート」は望み薄と言わざるをえないだろう。だが、悲観論ばかりでもない。

 片山氏は、欧州にも以前は女性議員が少なく、それでもイギリスサッチャー首相やドイツのメルケル首相が誕生した経緯を踏まえ、こう持論を展開した。

「日本の場合も、国を率いていける判断力や安定性を買われ『この人に任せるしかない』という声が高まれば、女性の首相が誕生すると思います。それが唯一の可能性。女性首相を誕生させようと思ってできる現状ではない。女性議員の数が圧倒的に足りませんから」

過去もっとも女性総理に近いといわれていた土井たか子氏と田中眞紀子氏。結局実現しなかった
過去もっとも女性総理に近いといわれていた土井たか子氏と田中眞紀子氏。結局実現しなかった

 数を増やすためには、一定数を割り振るクオータ制の導入も議論されているが、片山氏は「政治家は実力ありき」と導入には消極的だ。一方の福島議員は、フランスで採用されて男女平等指数が飛躍的に伸びた成功例を挙げ、導入には肯定的だ。福島氏が力説する。

女性は本来、政治に向いています。例えば教育や保育、ゴミ問題などその地域に根差した活動の延長線上に政治があります。女性がもっと表舞台に出てくれば、これまで優先順位が低かったDVや生理の問題など政治の優先順位が変わり、女性に優しい社会が実現できるのです。一部のためではなく、国民に寄り添う政治をやるには女性リーダーの存在が必要です」

 この理想が現実になる日は訪れるのだろうか。そして誰に白羽の矢が立てられるのだろうか。オジサンたちが政界に跋扈(ばっこ)する限り、潮目が変わるのは当分先になりそうだ。

《取材・文/水谷竹秀》